内容説明
アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
著者等紹介
カミュ[カミュ][Camus,Albert]
1913‐1960。アルジェリア生れ。フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。高等中学の師の影響で文学に目覚める。アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。またアマチュア劇団の活動に情熱を注ぐ。1942年『異邦人』が絶賛され、『ペスト』『カリギュラ』等で地位を固めるが、’51年『反抗的人間』を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。以後、持病の肺病と闘いつつ、『転落』等を発表。’57年ノーベル文学賞受賞。交通事故で死去
宮崎嶺雄[ミヤザキミネオ]
1908‐1980。東京生れ。東京帝大心理学科中退。岸田国士に師事、バルザック、サンド、メリメ、カミュ等、多くの仏文学を翻訳紹介。’41年、フランス文学賞受賞。戦後創元社編集長を務めた
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
839
小説はアルジェリアのオランの町を襲ったペスト禍の事後報告といったスタイルをとるが、報告者の医師リウーのエクリチュールが、一番の読みどころか。ペストがしだいに蔓延しつつある中、医師会の、そして行政のとる施策は事なかれ主義に終始するが、それは常にそうしたものなのだろう。次に登場するのが教会である。司祭パヌルーがそれを代表するが、彼の熱さと無神論者リウーの冷静さは、小説底流の構造を形成する。不条理の中にあって、その不条理にひたすらに耐え、運命を感受していくリウーの孤独は読者の共感をも拒否するかのごとくである。2015/10/19
starbro
744
私は天邪鬼なので、読む予定のなかった本が急に人気が出ても手に取ったりしないのですが、職場の読友さんから思わず借りたので読みました。大昔に読んだ『異邦人』に続いて、カミュ2作目です。不条理なパンデミック群像劇、私は以前NHKの100分de名著『ペスト』を観ていたので、スンナリ読めましたが、普段本を読まないのにブームで読もうとした人は、挫折している人も多いのではないでしょうか? ペストの設定[既知の感染症ペスト+少ない情報量]≒現在[未知の感染症新型コロナウィルス+多い情報量]かも知れません。2020/06/23
パトラッシュ
543
出勤時は地下街を通って地下鉄に乗り換えるが、先日そこを歩いているのが自分だけという朝があった。日常を奪われるとはこういうことか。私たちは今ようやくカミュが描いた「非道と暴虐のペストに支配された」世界を理解しつつある。ここには連帯して疫病防止に尽くす人びとは登場するが、本来それを先導すべき政治は市を閉鎖するだけの存在だ。コロナ禍にある現代人にとって作中のペストは戦争やファシズムのような暴力的支配ではなく、無数の監視カメラに支えられた恐怖政治に思える。中国や北朝鮮のように人はその恐怖も慣れてしまうのだろうか。2020/04/16
ehirano1
517
「人間」というものを奇麗ごとや正義なんかを度外視して真正面から見つめた大作だっと思います。「生」とは「死」であり、そしてそれらは「不条理」に中にある。そこにはただ各々の「生き方」と「死に方」があるだけ。しかし、それらは「愛」によって交絡されるのではないかと思いました。2024/08/25
青乃108号
508
【武器よさらば】の翻訳のひどさにすっかりやられてしまい、また「どうお。」な感じだったらどうしよう、と心配だったが全然別物だった。格調高く滔々と綴られる文章に陶然としながら、あまりに格調が高過ぎて理解が追い付かずしばしば迷子になりながら、何とか解ろうと闘うように読んだ。衝撃。そう、俺は病気になってリストラされて離婚も経験したがしぶとく生き残った。死にはしなかった。俺は何があっても生き続けるだろう。そのような確信がわきおこってきて1人笑いながら夜の町に駆け出した。2021/12/15
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