出版社内容情報
わずかな土地を大地主の黄(ホワン)家から借りて耕す小作農の王龍(ワンロン)は、黄家の奴隷の阿蘭(アーラン)を嫁にもらうことになった。美しくはないが非常な働き者の妻を得た王龍は、子宝に恵まれ、黄家の土地を買うまでに運が上向き始めるが――。19世紀後半から20世紀初頭の激動の中国で、三世代に亘(わた)り命がけで道を切り拓く人々の大河ドラマ。著者にピューリッツァー賞、ノーベル文学賞をもたらした世紀の傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
146
貧農の王龍は地主の奴隷阿蘭を娶り、地道に生活を築き上げていく。地に根ざした夫婦の歩みを通して人間と大地の密接な関係をわかりやすく体現した1巻は、全編の中でも特に充実した内容に仕上がっている。非情な自然を背景とした波瀾万丈のサクセスストーリーはそれだけでも読み応えがあるし、増える富と共に変化する生活模様や人間関係などの描写のリアリティは高い。自然災害による飢饉の様子も克明で、冷静な筆致の中にも登場人物たちを見守る温かな眼差しが感じられるのは、米国人宣教師の娘として人生の大半を中国で過ごした著者だからだろう。2018/08/30
夜長月🌙@読書会10周年
80
19世紀後半、清朝末期からの中国激動の時代を農民の目線から描いた大作です。よく、何かにつけて「昔はよかった」などと回想されることがありますが、人間社会は確実に進歩したと、この作品で描かれる人権無き世界を見ると感じます。主人公の王龍(ワンロン)は真面目な好人物と最初は思えましたが富を得るに連れ何度も豹変します。百姓から億万長者に上り詰めましたが物語は次世代へとつながっていきます。2021/05/03
Willie the Wildcat
63
翻弄される人生からの自立。心の拠り所は、家族であり故郷。時に様々な欲が目を曇らせ”寄り道”。霧が晴れて目にした真の宝物。過程に垣間見る「徳と業」。豊かさ故、そして貧しさ故の「徳と業」の対比が印象的。加えて、人生の意義を問いかけるかのような女性1人1人の異なる生き方。特に、阿蘭の人、女性、そして母としての愚直な姿勢。黄家への”里帰り”が印象的。親の心子知らず・・・。ふと、私自身の両親から聞いた高度成長期の頃の話を思い出す。仕事、家庭・・・。う~ん、両親の精神的な強さには、まだまだ到達してないよなぁ。2015/10/08
藤月はな(灯れ松明の火)
60
一年ほど前、実家から一人暮らし先に戻る際にお隣に座らせてくださったおじ様が若いころからの愛読書だと仰っていた本。お嫁さんが貰えると思い、粧し込む王龍が微笑ましい分、大地主になってからの傲慢さが鼻に就く。一方、元地主から下賜された、不器量だけど生きることに聡明な阿蘭の強さが素敵です。しかし、土地に縋る彼らの生活は厳しい。干ばつや氾濫による飢饉、役立たずの親類を無下にできない儒教思想、口減らしのための子殺し、妾を囲むことでの軋轢、世代が異なる故の考え方の相違、老いらくの恋などと波乱万丈。さて土地は売られるのか2013/07/07
キムチ
58
再読していきたい100冊・・じゃないけど、まずこれ!新装となって実に読みやすい。訳はその時代の言葉の息吹といえば さなるかな。王龍、阿蘭も観光地で見かける今の中国人の空気を吸っている気がした(といっても時代は100年余り前)中国も奥に行けば、こういった土壌で日々に埋もれている人があるかも・・と思ったり、辮髪が出てくるから清朝の香りがしたり、、やはり重厚さはぴか一。改めて読んでも細かい情景の描き方がさすがに凄い、ノーベル賞だけある。ページの中で動いている、走っている、泣いてわめいている。2015/09/17
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- 群書類従 神祇部9