感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
64
ダブリンの人々を、幼年、思春期、成人、老年と順を追って登場させた15の短編集。そこに描かれているのは、ダブリンに住む人々の愛欲・宗教・文化・社会にわたる「無気力」だ。ジョイスは、新しいことを求める気力がなく現状に安住していようとする「無気力」に支配されているダブリン市民に不満と嫌悪を感じ、「精神的な麻痺」が見られると激しく反発した。 「対応」に描かれている男は、怠け者で酒好きで、常に貧窮に追われていた父がモデル。「エヴリン」は、ダブリン市民の「精神的な麻痺」を象徴的に描いた作品。2024/02/01
拓也 ◆mOrYeBoQbw
34
短篇集。群像劇・都市幻想。20世紀最高の作家の一人、ジェイムズ・ジョイスによる、後の『若き芸術家の肖像』『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』への先駆けとなる一冊。ジョイス作品では読み易い部類に入りますが、サキやモーパッサンの短篇の様な驚異的などんでん返しが待つタイプではなく、後のヘミングウェイ、カポーティ、カーヴァーが得意とする”迷路や蜘蛛の網に絡め捕られる”タイプの話が多いですね。そしてダブリンの描写や街中の人物たちの描写も短篇のプロットと絡み合って後の大作への片鱗が垣間見えるかと(・ω・)ノシ2018/06/06
二戸・カルピンチョ
25
これが麻痺であり無知であるのなら、私達は誰もが麻痺して無知であるのだろう。遅々として進まぬようで、いつでもゆっくり動きは止まらず、たどり着けば目を見張る場所にたつ。人の内面はたえず対流し続ける。そんないつかのダブリンだった。2020/06/05
あっきー
19
⭐2 10年間積読本キャンペーン19冊目、学生の頃に買ったのだが冒頭で即挫折積読、ダブリンの15人の人々の日常生活の一人一編の短編集で地味なので若い頃は読めなくてもしょうがない、年を食ってやっと落ち着いてじっくり読めるようになり、100年前も今も人が考えることはさして変わらないし、まあ何となくこんな落ち着いた話もたまにはいいかという気分だ2020/11/17
金吾
17
名前はよく聞いていましたが、はじめて読みました。奥に深いものがあると思いますが、あっさりしすぎていてそこまで読み取れなかったです。ただ訳のためなのか写実的であり、なんとなく閉塞した風景が頭に浮かびました。「土くれ」が良かったです。2020/11/26