内容説明
声を失ったその少年には親友のオウムがいた。彼の代わりのように不思議な数列を連呼するオウムが。少年は九歳。親を失い、祖国を離れ、英国南部の片田舎で司祭の下宿屋に引き取られている。彼が巻き込まれた奇禍とは殺人事件とオウムの失踪。養蜂家の老人に司祭一家のドラ息子、謎の下宿人―。オウムはどこに?そして犯人は?ピューリッツァー賞作家による正統派ホームズもの。
著者等紹介
シェイボン,マイケル[シェイボン,マイケル][Chabon,Michael]
1963年ワシントンDC生れ。現代アメリカ文学シーンで最も期待されている作家の一人。’88年、25歳でデビュー作『ピッツバーグの秘密の夏』を発表、絶賛を浴びた。以後コンスタントに作品を刊行、’99年にはO・ヘンリ賞を受賞、2000年の『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』ではピューリッツァー賞(小説部門)を受賞している。’07年の『ユダヤ警官同盟』ではヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞の“トリプル・クラウン”を制した
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生れ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
59
この物語は作者があの名探偵の晩年を偲んで書いたものという感じで読み終えました。だから自分にとってミステリーの部分はどーでもいいです…というか、作者にとってはその部分がミステリーで、タイトルは原題のままでないといけないんじゃないか?とも感じられます。へたな先入観を持って読み進めることがこの作品をぶち壊すような?そんなよけいな邦題タイトルです!2013/09/16
Die-Go
41
一人シャーロック・ホームズ祭り第12弾。マイケル・シェイボンによるパスティーシュ。再読。89歳になったホームズが、行方不明になったオウムの捜索及び殺人事件の犯人を追う。ホームズの名は終始出てこず、「老人」と呼ぶ著者の思いに興味を覚えた。★★★☆☆2016/04/16
ジェンダー
41
短くてちょうど良いけれどシャーロック・ホームズ好きでたくさん読んでいるけれど何か物足りない感じがする。確かにいくつになっても助けたいという思いと静かに暮らしたいという希望をもちながら生活しているのが伝わって決ます。年齢が年齢だから坑道がゆっくりだから年をを重ねても若い頃と同じように自分で出来ることはする。こういうのは理想だと思う。老人としての描きかたはリアルで良かったと思う。2014/06/04
Ecriture
22
1944年、ホームズが89才の老人になって足腰が弱り、かつて自信を持っていた記憶力や推理力にも衰えが見えたとき、殺人と不可思議な数字を話すオウムの失踪事件が起こる。ホームズの衰えは、近代合理性と啓蒙主義の疲弊と摩耗でもある。緋色の糸を見いだせないホームズは、明らかにポストモダニズムの洗礼を浴びている。フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットの一揃いを追求した(ホワイダニットに異様なページ数をかけた)『緋色の習作(研究)』、及び、正典としてのホームズ60作品の方が異常だったのではないかと思わせるに十分だ。2015/08/20
ぽま
16
1944年を舞台に据えた珍しいパスティーシュ。第二次世界大戦の真っ最中というその時代背景も相まって、全体的に非常に重苦しさが漂う作品。このころにはホームズの年齢も89を数えており、彼がほぼ四半世紀ぶりにロンドンを訪れ、その荒廃とアメリカ的な復興の様子に動揺するシーンは胸を打たれる。また、最後まで「シャーロック・ホームズ」の名前を表記せずに「老人」と形容している手法は、ヴィクトリア朝時代のイメージを更に遠くに感じさせる。2013/01/13