新潮文庫

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  • サイズ 文庫判/ページ数 299p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101478135
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

満州で生まれ、朝鮮で育ち、一高・東大に進学した輝かしい経歴の「父」は、反面、十代で結核に罹患し、敗戦の引き揚げで弟妹を失う挫折を味わった。天才的資質ゆえに深かった屈託は、独特の直情的行動に現れ、家庭では小学生の「私」に毎夜文学や哲学を講義し、庭中を花で埋め尽くした。そして、鉄鋼会社の役員を退いた後は、自ら死をたぐり寄せるかのようにせき止めシロップを多飲する。鮮烈だった「父」の生と死。

著者等紹介

小林恭二[コバヤシキョウジ]
1957(昭和32)年、兵庫県に生れる。東大美学芸術学専修課程修了。’84年「電話男」で海燕新人文学賞を受賞、翌’85年には「小説伝」が芥川賞候補となり、先端的なテーマを卓抜なアイデアと軽妙なユーモアに包む作風で一躍、現代文学の旗手と注目される
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感想・レビュー

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ふじさん

82
図書館本。この本で、初めて小林恭二という作家を知った。自分の父親の一生を綴った私小説。すべて実名の完全私小説で、かねて橋川文三の親友として知られていた神戸製鋼重役だった父親小林俊夫を描いている。ちゃんとした純文学で、文章も端正で読みやすい。いかに父が奇人であったかを描いるが、東大卒の企業重役の金持ちには変わりなく、小林恭二自身も良いうちのお坊ちゃんにしか見えなこととダメ人間だった言いながら、恭二自身も東大卒であるため読む人には納得できないもやもやがあるような気がする。奇異な人物の人生は面白かった。  2024/12/18

三柴ゆよし

5
著者従来の作風からすると異色作ということになろうか。事実と事実の間隙を縫うようにして、言語に尽せぬ空虚をその身に宿した、ひとりの「父」の姿が現前してくる。自身と父との微妙な関係についても、ある程度まで言葉を費やしており、その点では、著者唯一の(私の知る限りでは)私小説といえるかもしれない。批評と感傷が見事に折衷した傑作であろう。「昼の月淡々しきを一目見て終に言い得ぬ物を悲しむ」。2010/12/29

ミツ

3
著者が自らの父の生涯を親戚知人へのインタビューとそれに対する批評を綴った小説。 作家の身内自慢かと思いきやなかなかどうして感傷的で、父のことを誇るでも貶るでもなく鮮明に書き出そうとしている。 やはり戦前生まれの人の人生は壮絶で、迫力があり、ドラマとして十二分に面白い。2009/08/20

takao

2
ふむ2024/09/22

三月うさぎ(兄)

1
『カブキの日』以降、なんとなく遠ざかっていた小林恭二。『宇多川心中』に続いて第二弾。 前半はありがちな一族の系譜を取材する話なんだけど、後半、「父」について「わたし」が語り始めると、その結核と戦争と死に彩られた人生からトーマス・ベルンハルトを連想せざるを得なくなる。ベルンハルトが「自伝」として自分と距離を置いたのに対して、小林恭二は「父」を書くことで自分と距離を置くことができたように思う。そうすることで「死」を自分のこととして書くことができたのではないか。2025/02/14

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