内容説明
頭上には電線がとぐろを巻き、街ではスピーカーががなりたてる、ゴミ溜めのような日本。美に敏感なはずの国民が、なぜ醜さに鈍感なのか?客への応対は卑屈で、「奴隷的サービス」に徹する店員たち。その微温的「気配り」や「他人を思いやる心」など、日本人の美徳の裏側に潜むグロテスクな感情を暴き、押し付けがましい「優しさ」に断固として立ち向う。戦う哲学者の反・日本文化論。
目次
1 ゴミ溜めのような街(明大前商店街;日本人は美に敏感である ほか)
2 欲望自然主義(日本は美しい;欲望自然主義とは何か? ほか)
3 奴隷的サービス(日本人客室乗務員と欧米人客室乗務員の違い;江戸しぐさ ほか)
4 言葉を信じない文化(垂れ流しキャンペーン;『その油断火から炎へ災いへ』 ほか)
5 醜と不快の哲学(醜と不快との関係;感受性と普遍化 ほか)
著者等紹介
中島義道[ナカジマヨシミチ]
1946(昭和21)年福岡県生れ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ウィーン大学大学院基礎総合科学哲学博士課程修了。2009年、電気通信大学教授を退官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
25
普段は自分の生き方や気持ちを語ることが多い著者だが、今回は、日本の景観や商習慣に言及した内容。日本の景観の悪さは、京都の事例を中心に見えているものを見えていないことにする日本の多くの人々の深層心理を明らかにしている。逆にアジア的な雑多な景観を自慢している傾向も出てきていると指摘する。また、レストランでの過剰なサービスを受けて、店員の心との乖離やクレーム対応のその時の対応、その後の対応の差のひどさを怒りながら分析している。さすがにクレーマーだと感じる著者の行動も問題だと感じる。2018/10/26
金吾
23
いろいろな題材を取り上げ、表現していますが、結論として著者は日本社会の過干渉に対して不満を持ち、著書においてその怒りを爆発させています。そうだと思う部分とやり過ぎと思う部分はありましが読みながら結構笑いました。2022/08/05
白義
13
これまた激しい。日本の景観、サービス、言葉への意識をこうもはっきり、オブラートにくるまずに「醜い」と言ってしまうのには感動すら受けてしまう。だが、中島義道が哲学者である由縁は、彼がそれを単に愚かで切り捨てず、根底から揺さぶり戦うためにその醜さを支える感性、思想的原因をとことんまで考え詰めることだ。中島義道は感受性が鋭敏過ぎるのもそうだし、他の人が自然にやってる感受スイッチのオンオフが出来ない人なのだろう。歩く異議申し立て、反-世間-存在だ。だが知識人とはそもそもこのような人のことではないだろうか2012/08/24
ノニコニ
8
只のクレーマーが書いた文章にならずに何だか笑える。中島さんを小バカにしたような装丁も好き。「皆様のおかげで、」とか言ってしまうオリンピックのメダリスト、気持ち悪くて、そう感じる人いないんだなと思ってたら、この人そうだった。 たまに読みたくなる中島義道さん。 2025/04/07
sayzk
8
海外の事はわからんが接客の異様さは不快な私。また、町の必要以上の看板やのぼり、張り紙には違和感あるも多少許容。看板については古くなるとそれなりに味わいがでる場合ありませんか?松山容子のボンカレー、大村昆のオロナミン等々。もし著者の言に従い、張り紙や看板、警告放送をやめたとしよう。そこに「告知すべし」というマイノリティが出て来たらどうなるか?中島先生と対決見てみたい。「うるさい~」も読んでみようか。尚、2006年の著作なので江戸しぐさについて肯定的に引用されている。2018/03/28