内容説明
北宋第6代神宗の時代、民生の安定と財政の立直しを図って、大胆な「新法」を断行した名宰相王安石。中流階級が没落し、特権階級と貧困層が対立する近世的社会状況のものでその革新政策は成功するかにみえたが、官僚や豪商たちの執拗な抵抗にあい、神宗没後、すべては旧に復する―。硯学が、文人としても名高い王安石の政治的功業と挫折を通して、中国政治の伝統的体質を解明する。
目次
独裁政治の発達
独裁政治の弊壊
王安石の出現
王安石の新法
新法の意義
感想・レビュー
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ロビン
12
北宋神宗の時代、独裁主義国家の弊害が表面化して中流階級が没落、特権階級と貧困層の二極化が進み国家が不安定化した際、民生の安定と財政の立て直し、兵制改革などの富国強兵政策ー所謂「新法」をたてたのが王安石である。しかし、司馬光ら「旧法」派、官僚や豪商らの利益を侵害する新法は激しい抵抗に遭い、神宗の没後廃されてしまう。均輸法、青苗法、募役法など新法の内容について、また宋代の時代背景の説明が非常に詳しい本で、勉強になった。国家また百姓たちのことまで考える神宗・王安石と自己保身の官僚・豪商たち・・改革の難しさ。2024/04/02
富士さん
2
再読。王安石の伝記というよりも、新法改革の解説書です。宋代社会の在り方がうまくまとめられており、この時代の意義や問題点を簡単につかむにはよくできた本だと思います。個人的には著者の独自性よりも、宮崎先生はじめ京大学派の歴史観を代表した記述なのではないのかな、と思いました。ただ、その分王安石という興味深い人の人となりがよくわからない恨みがあって、資料がないわけではないのに公生活しか描かれていないのは不満です。この時代の士大夫はだまで描かれることが多いですが、この人はそれに収まらない人なのではないでしょうか。2016/07/12
鴨の入れ首
0
北宋中期の政治家・王安石の政治キャリアと事績に関する解説書です。王安石はいわゆる「新法」という改革を主導しましたが、王安石が新法を引っ提げて登場せざるを得なかった時代背景と新法の内容、そして新法が抱えていた弱点をも解説されておりました。ただ、他の解説にも指摘されているように、本書は公人としての王安石にスポットライトを当てており、人間王安石の人となりや私生活についてはほとんど書かれていないのでその点は注意した方が良いかも知れません。2024/02/28