内容説明
身に覚えなき「遺恨」から刃傷を受けた吉良上野介。咎めは免れたものの、賄賂などのあらぬ噂が流され不遇の日々を送っている。そんな彼の頭を占めていたのは「浅野はいったい何を根に持ったのか」の疑問だった―。忠臣蔵事件最大の謎に迫る表題作をはじめ、討入り直前の内蔵助を描いた「十三日の大石内蔵助」、直木賞候補作「千里の馬」など、斬新な角度から忠臣蔵を映し出す5編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はかり
11
池宮は初読。こんな作家がいることを知らなかった。忠臣蔵の関連短編が5篇。いずれも面白く一気読みだった、癇癪持ちの内匠頭、好色家の内蔵助、小心者の上野介等など虚実合わせて面白い。とりわけ「千里の馬」は秀逸。千馬三郎兵衛と内匠頭の維持の張り合いは良かった。今後も池宮を追いかけたい。2018/08/29
まえじぃ
6
再読。初めて読んだのは高校生の時。実は私自身が生まれも育ちも赤穂で、忠臣蔵はごくごく身近なものでした。小学校では義士祭が近くなると忠臣蔵についての学習があったのですが、小学生への学習、しかも地元贔屓?も入ってか、やはり四十七士のいい面についてが多く、かなり偏っていました。 なのでこれを読んだ時は本当に衝撃を受けました。だって殿様がヒスっぽくてキレやすいとか、討ち入りに参加した浪士の半分が長く赤穂藩に仕えていたわけじゃないとか…知っていたこととは違うことばかり。本当に忠臣蔵に興味を持ったきっかけの一冊です。2014/07/02
つちのこ
3
池宮彰一郎の作品は『四十七人の刺客』『四十七人目の浪士』を読んでいるが、忠臣蔵を書かせたら何と言ってもこの人のが一番だ。大石内蔵助のイメージについても池宮彰一郎が描く大石像が私にとっては不動のものとなってしまった。 この短編集のなかでも『十三日の大石内蔵助』は大石の中年おやじらしい好色なそれでいて人間的な側面や、機械のように計算され尽くした緻密な思慮深さがうまく書けていて興味深い。(2000.1記)2000/01/12
金吾
2
視点が変わると物語の見方が全然違ってくるのが楽しいです。2018/08/19
紫
2
忠臣蔵モノの大傑作『四十七人の刺客』のサイドストーリー短編集。『剣士と槍仕』は地方出身で牢人生活が長かった苦労人堀部安兵衛と旗本の次男坊で苦労知らずの若者高田郡兵衛の対比が面白い。表題作は吉良上野介視点で振り返る刃傷事件の真相。刃傷の理由については諸説あるんですが、これはなるほどもっともと思えるリアリティ。身近で見ている藩士視点の赤穂藩主浅野内匠頭がいずれも短期で無分別で、刃傷事件をやらかしてもおかしくない面倒な人物と描かれる一方で、吉良視点から見た浅野像が一番まともなのが何とも皮肉であります。星5つ。2016/08/22
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- 和書
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