内容説明
太宰治の『津軽』をリュックに入れて、ほぼ半世紀前の晩春、傷心の太宰が「自分」を探しに故郷を訪ねた、二十三日間の足跡を辿った。太宰が見たものを見よう。しかも、ひたすら歩いて―。行く先々の老若男女と大いに語り合い、酒を酌み交し、斜陽館のバーでは「与作」を唄う。シェイクスピアの末裔たる英国人作家が、眼と耳と、肌で接した本州さいてはての地の、人情と風景は…。
目次
1 外ヶ浜
2 稲田の湖
3 仏の岩
4 出湯と城
5 家
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いたろう
45
昭和の終わり、青函トンネルが開通したばかりの頃、日本通のイギリス人文筆家が徒歩でたどった、太宰治の「津軽」の足跡。それは、太宰を巡る旅であり、日本人ですらあまり訪れない町を訪ねたイギリス人の目から見た津軽の姿。著者は、人懐っこい人柄と明るさをもって、地元の人と親しくなり、酒を飲み、演歌を歌う。その様子が、太宰と離れて、純粋に旅行記として面白い。この本のサブタイトルは、「失われゆく風景を探して」だが、書かれてから四半世紀以上が経ち、この本の中のいくつかの風景は、既に失われてしまっているのかもしれない。2016/04/23
人非人
2
津軽半島をひたすら歩いて旅行ってのがいかにもイギリス人だなと思った。定食屋でビールを呑み、地元民と語らう。ああ、自分も旅がしたい2015/03/07
モノクロ:狛犬エルス
1
イギリス人が太宰治の旅路を遡りながら、ウィットに富んだ冷静な視点で片田舎を歩き倒す。 変に日本の良いところを書き連ねた本よりも、その語り口は日本により馴染み深いもののはず。 荒涼とした海岸線の道をひたすらに歩く作者の姿が脳裏に浮かびます。2015/09/21
frog
1
日本在住20年を超える英国人作家が、太宰治の『津軽』を携えて1980年代後半の津軽半島を徒歩旅行した記録。外国人への好奇の眼差しをはねのけて人情に触れていく姿がなんとも好いが、全体的に陰鬱なトーンで語られる津軽の風景がなんとも寒々しい。2011/06/11