内容説明
両親の離婚でひとりぼっちになった少年は、13歳の誕生日を迎え、憧れのサーカス団・レインボーサーカスに飛び込んだ。ハイヒールで綱の上を歩く元男性の美人綱渡り師、残り物をとびきり美味しい料理に変える名コック、空中ブランコで空を飛ぶ古参ペンギンと、個性豊かな団員達に囲まれて、体の小さな少年は自分の居場所を見つけていく。不自由な世界で自由に生きるための、道標となる物語。
著者等紹介
小川糸[オガワイト]
1973(昭和48)年生まれ。『食堂かたつむり』は、2011(平成23)年にイタリアのバンカレッラ賞を、’13年にはフランスのウジェニー・ブラジエ小説賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
530
ひさびさの小川糸作品。過去作の根底に流れる(と勝手にわたしが思う)「生と死、そして食」を今作でも読ませてくれた。難病を治すために使われた薬のせいで、体の成長が止まってしまった13歳の少年がサーカスに飛び込み、成長していく物語。かつて一度だけ観たサーカスに、10歳の体の少年を当てはめて読み進めた。サーカスは賑やかだがどこか物悲しく、幻想的な物語の進行に抜群の効果を与える。どこの国のお話なのか想像するのも楽しい。少年とその家族(サーカス団含め)に幸あれ。読後感よろしい。2023/10/14
SJW
131
両親の離婚で一人になった13歳の僕は、憧れていたレインボーサーカスに働かせてほしいと飛び込んだ。まずはコックに弟子入りし、ハイヒールで綱渡りをする元男性、空中ブランコで飛ぶペンギン、サーカスを仕切る怖い団長など、変わった人達に囲まれてめんどうを見てもらいながら、自分の居場所を探していくストーリー。残り物や動物から美味しい料理を作るのはさすが小川さんならではの展開で、僕が技を習得していく成長もこの小説の醍醐味だと思う。2020/12/27
さてさて
126
『人生の哀しみを知らなくちゃ、相手を笑わせることなんてできない』という言葉の通り、”サーカス”の華やかな舞台の裏には、深い孤独や悲しみを乗り越えて生きる人々の暮らしがありました。そんな思いを幼い頃から人一倍経験してきた『僕』。そんな『僕』がこれから生きていく未来は、きっと人々の笑顔に囲まれる、そんな舞台に生きる人生になっていくんだろうな、そう思いました。小川さんらしさに満ち溢れたとても優しい、そしてあたたかい物語でした。2020/12/09
はるを
122
🌟🌟🌟🌟⭐︎。小川糸さん初読み。童話を読んでいるようで面白かった。小学生でも読解できるくらい噛み砕いた文体なのに書いてある事は奥深くて核心を突いている。親からの巣立ちとは、新しい環境に飛び込むとは、自分の居場所を作るとは、好きな職業に就くとは、仕事の継続とは、コンプレックスとの向き合い方、失恋との向き合い方、人生を切り開いていくとは、ざっと思いついただけでもこれだけの事が、しかも説教じみてなくどこまでも優しく時には厳しく(なんとなく)一話完結、全16エピソードの物語を綴っている。新品でも良かった。2021/04/28
mocha
121
国も性別も年齢も学歴も、すべての枷を取っぱらった「レインボーサーカス」という世界。10歳くらいで成長が止まった少年が、ここでさまざまなことを学びながら成長していく物語。大きくなれない体に押し込められても、心は自在に変えられる。彼らの生き方に、たくさんの意味を見出だせる、奥深い作品だと思う。幻想的な月夜の別れのシーンが、一枚の絵のように心に焼きついている。2017/09/10