内容説明
私は幼い時から、「赤」が好きだった。血を思わせる激しい赤が―。取り繕われた芸術品や輸入文化に背を向け、神聖な巨石、鮮血と太陽、マンダラ宇宙、聖なる火、夜と闇、戦慄の仮面、無限の組紐文など、もの言わぬ文化や神秘的な事象に注目する。原始からの鼓動に耳を傾け、中世の色彩に心動かされ、現代世界について深く思考する、恐るべきパワーに溢れた美の聖典が、いま甦った。
目次
1 イヌクシュクの神秘
2 石がもし口をきいたら
3 血・暗い神聖
4 古代の血・現代の血
5 透明な爆発・怒り
6 挑戦
7 仮面の戦慄
8 聖火
9 火の祭り
10 夜―透明な渾沌
11 宇宙を彩る
著者等紹介
岡本太郎[オカモトタロウ]
1911‐1996。東京生れ。岡本一平とかの子の長男。東京美術学校に入学、父母の渡欧に同行し、’30(昭和5)年からパリに住む。数々の芸術運動に参加しつつ、パリ大で哲学・社会学・民族学を専攻、バタイユらと親交を深める。帰国し兵役・復員後、創作活動を再開、現代芸術の旗手として次々と話題作を発表した。’70年の大阪万博テーマ館もプロデュース。一方、旺盛な文筆活動も続けた
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感想・レビュー
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T2y@
35
大阪万博の制作と並行して著されたと言う『岡本太郎による世界美術館』的なエッセイ。 怒り・憤り・畏れ… 太郎なりの美的感性から評されるテーマはゴッホ、ピカソ、ゴダールらの著名美術作品のみに留まらず、作者不明の作品、聖地、土着の祭り・儀式など、アミニズム・シャーマニズムに根差した有形・無形の『美』にも及ぶ。 “才能と技巧は違う。技巧を伴わない才能こそが芸術。” 評論の形を取りながら、各々に挑み向き合う様な、ほとばしる言葉は、全編にパワーが漲っている。 この空気感から『太陽の塔』は産まれたのだなと。 2016/07/07
ホークス
29
詩を叩きつける様な激しい語りに圧倒された。話は石から始まる。恐山、エスキモー、モンゴル、沖縄に共通する、信仰を帯びた自然物の如き石積み。ただの石に、強固な価値観と無名の意思が息苦しいほど込められている。中世を否定したグリューネヴァルトの禍々しいキリストは、曾我蕭白の仙人みたいに毒気と狂気を発散する。仰々しい「芸術作品」よりも、単純に見える綾取りの方が強烈に神秘的だと言う。著者が芸術にも人生にも必要とする「憤り」は難解だが、本書のドラッグ効果が理解できた気にさせるから不思議である。2017/09/07
姉勤
28
正反対でありながら、相対しなければ互いに有り得ないもの。静と動 死と生 具象と抽象 火と水 聖と穢 女と男 陰と陽 実と虚 生物と無機物 人間が文字を知らぬ以前から、芸術と意識する前から、表現の中具わり、現代人が「芸術」としてから本質が霞んでしまったかもしれないもの。道教で云えば「太極」を、岡本太郎は人が失ったか眠らせた、世界に溢れているものを感応できるアンテナ,チューナ、そしてプロトコルを体内に備えているかもしれない。加えてアウトプットする能力も。その装置がない大多数の人は共感するよりも、畏れ怪しむ。2015/04/16
ロビン
20
『芸術新潮』に連載された「わが世界美術史」をもとにして編まれた本。「良い評論とは、今までにない角度から作品を読み解いたもの」と言われるが、若き日にパリで民俗学を学んだという太郎が、まさしく太郎独自の審美眼と切り口でグリューネヴァルトのキリスト、カナダのイヌクシュク、モンゴルのオボ、日本の兜などを次々と語りあげてゆく。きれいごとではなく、また誤解を恐れず、ギリギリッと人間という生き物の本質に肉薄してゆく太郎の文章は炎と血を象徴するかのように真っ赤で、肉感豊かな詩のようですらあるし、美の呪文のようである。2022/07/05
A.T
20
芸術は、爆発だ! 太郎さんといえばこのフレーズだったが、その真意が本編でわかります。ナルホド、反骨精神にはワケがあった!2016/06/07
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