新潮文庫<br> 一輪

新潮文庫
一輪

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  • サイズ 文庫判/ページ数 185p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101342122
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

電気工の青年が修理に訪れたのは昼休みの風俗店だった。手作りのサンドイッチを俯いて食べていたヘルス嬢に青年は一目見て恋をした。以来、青年は客として彼女を指名するようになるのだが…。アスベストの被害に遭い長くは生きられない電気工と路地裏の風俗店で息を潜めて生きる女。大都会の裏側で蠢く不器用な男女の切なく哀しい恋を紡ぎ出す傑作「一輪」など、中編二編を収録。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おしゃべりメガネ

199
ここ最近の作品では読んだコトがないくらいビックリするほど、まっすぐでピュアな‘純愛’な物語でした。病を抱える電気工と風俗嬢の二人の世界は、とにかく余計な表現や描写は一切省かれ、ただひたすらにお互いの相手を想うキモチが優しさと温もりに包まれています。書かれたのが今から20年以上も前の平成3年で、当時の雰囲気がじんわりと伝わってきます。携帯もスマホもなく、ポケベル時代の描写が懐かしくもありました。部妙に『ア・ルース~』とパラレル的なリンクもしているようで、本作も中編2作が微妙な繋がりを感じさせてくれました。2016/07/01

メタボン

42
☆☆☆☆ 「一輪」「ポートレート」とも風俗嬢を題材としており、エピソードも共通に出てくる。昨今若い女性のワーキングプアが問題となっているが、そのような悲壮感はなく、題材の割には明るくて救われる。「一輪」で、二人がファッションマッサージの個室で風俗行為を行わずに交わす軽妙な会話が良い。しかし、結局、結ばれない二人が切ない。初出の文芸誌が「海燕」という点も、日本のバブル当時の空気感を思い起こさせ、ちょっとした感慨に浸った(当時私は大学生で、海燕で島田雅彦や小林恭二と出合った。佐伯一麦は気になっていた作家)。2021/12/14

まるほ

37
お気に入りの読友さんのレビューから手に取った作品。▼不器用ながら一途な男女の恋愛模様を、男目線と女目線でそれぞれ描く中編2作。劇的に感情を高ぶらせるような作風ではなく、淡い水彩画のような世界観。主人公が一人称で語るように淡々と描く。ところが読了後には、なんともいえない“もの哀しく切ない”余韻が残る。▼作者の人生観が色濃く反映されている“私小説”は、なかなか貴重な読書経験でありました。2019/03/01

かっぱ

36
【図書館】佐伯一麦作品を続けて読んでいる。「山海記」、「ショート・サーキット(ほか2作品収録)」に次いで、これで3冊目。「一輪」、「ポートレート」を収録。「一輪」は風俗嬢と電気工の恋愛を描いた作品。何気ない会話のやりとりにふとした優しさが感じられる。「似たもの同士だもんな、おれたち」、「ほんと」なんて会話、ちょっとこそばゆくなるけど、多くの男女の出会いは、この「似たもの同士」感からじゃないだろうか。都会の片隅に咲いた一輪の花。蕾が少しだけ開いて、やがて、そのままの状態で枯れてしまう。2019/07/15

背番号10@せばてん。

34
1996年3月24日読了。同年公開の映画の主なキャストは、真弓倫子(当時25歳)、金山一彦(当時29歳)。あらすじはもちろん忘却の彼方。1996/03/24

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