内容説明
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る―。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒業。広告代理店勤務等を経て、’77年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「蛍川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため一年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。『優駿』(吉川英治文学賞)等、多くの作品がある
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感想・レビュー
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zero1
527
事件をきっかけに別れた夫婦が再会し、往復書簡で語り合う。メールが当たり前の時代だから、この作品の意味がある。 別々の人生を歩む二人に不幸が襲いかかる。それでもどこかに救いがあり、読者のカタルシスにつながる。私が【救い】として最も気に入ったのが令子。地味だが彼女こそ女神。どんなことがあろうと人生は不幸だけで終わらない。また人の善なる部分を信じている作者は強い。宮本は、芥川賞の選考委員として作品の長さに拘りを見せている。私は「螢川」が一番好きだが、短くても過不足ない表現というのは今の作家も見習ってほしい。2018/10/17
宵待草
477
かつて夫婦だった勝沼亜紀と有馬靖明の、往復書簡で構成された小説です。 夫婦だった二人は別々の人生を生きて、紅葉の美しい蔵王のゴンドラリフトでつかの間の再会を得ます。殆ど言葉を交わさず、再び別れます。其の後に亜紀は靖明へ手紙をしたため、靖明も戸惑いながら返信します。離婚の原因と成った靖明の不義の経緯などから、次第に其々が生きて来た歳月や現在を記す手紙へと変わっていく、、、美しくも哀しい小説! 表紙は有元利夫『静寂と詩情』が使われて居ます。此の小説には似合って居ると思えます。、、、コメントへ続く!2020/06/16
遥かなる想い
427
最初読んだ時は、その好さがよくわからなかった。少し歳をとって読み返して、その壮絶な恋愛に感動した。手紙が織り成す想いはとても 重い。2010/05/01
bunmei
298
『錦繍』とは、美しい織物、文章の意味。文字通り本作品は美しい言葉で綴られ、お互いを気遣う書簡のやりとりで、物語は展開します。現代のメールやLINEでは決して味わえない日本語の美しさや日本人の奥ゆかさも感じられる作品。ある事件を機に離婚し、10年振りに再会した元夫婦。2人ともそれぞれの人生を歩み始めた中、あの時何故もっと引き留められなかったのかという自責の念と共に再び燃え上がる情念。切々と語られる互いを思いやる気持ちと口にはできない愛おしさが伝わる大人の恋愛小説です。モーツァルトの調べと共にお読みください。2017/08/03
Major
294
ドッコ沼の燃えたつ赤のような不条理な業を背負い「生きていることと、死んでいることとは、同じことかもしれない」と虚無に沈む元夫婦。しかし、全焼という破滅を経て、二人は自らの弱さを受け入れ、それぞれを支える「横糸」の存在に気づく。本作は、過ちを罰するのではなく、カルマを抱えたまま懸命に生きる人間の生をただ見つめ、慈しむ「裁かない文学」の傑作である。孤独な縦糸同士が手紙で紡いだ奇跡の対話は、過去を未来への礎に変え、今を生きる私たちの心をも優しく包み込む。僕もまた、魂を救うモーツァルト39番を聴きながら筆を置く。2026/08/06




