内容説明
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
著者等紹介
米澤穂信[ヨネザワホノブ]
1978(昭和53)年岐阜県生れ。2001(平成13)年、『氷菓』で角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
874
以前「ナミヤ雑貨店の奇蹟」のコメントで引用したキャプラ監督の「素晴らしき哉、人生!」でこの作品を読みたくなり再読。どちらもパラレルワールドを描いていますがまるで写真のネガとポジのような関係です。素晴らしき~は主人公がいなかったらどれだけの人が不幸になっていたかに対してこの作品は貴方がいなかったらどんなに幸せになっていたか。なんと残酷な物語。でも逆に云えば知らない所でまたその逆もあるのではないか。貴方がいる事で喜びを感じる人がいる。それは例えば貴方の母親。悲しく陰鬱な中に希望や温もりも感じる大好きな一冊です2015/10/01
ehirano1
689
こちら側(此岸)とあちら側(彼岸)ということで否が応でも村上春樹を彷彿させます。村上春樹よりも分かり易いと思いますが、唸ってまで考え込みたいハードコアタイプの読者の方には深みが足りないかもしれません。2018/03/03
馨
668
思ってたよりも、暗いストーリーでした。 ハッピーエンドじゃなかったけれどミステリー的な部分は面白かったです。 2012/05/16
再び読書
589
自分の存在価値が否定される、中身は実は重い。救いが欲しい、心の中で叫ぶが、救いは得られない。自分は生まれるべきでは無かったのか、そう問いかける心境は文体以上に重く感じる。両親の不倫が、彼の心を傷つけ、苛んだ。内容に比べ、重さを感じさせないリズムで物語は進められていく。2012/08/25
kishikan
539
米澤さんについてはこれまで発刊順とかに関係なく読んできたので、2006年発表のこの作品が、デビュー前から彼が持つアイディアとは知りませんでした。ボトルネックという意味が、小説の主題とどう絡んでいるのか当初分かりませんでしたが、最終場面で一気に氷解した(と思っている)時には、こりゃ凄い小説だと思いましたね。主人公リョウが迷い込んだパラレルワールドの世界と元の世界との違いの根本が自分の存在、という謎解きは、単なる青春SFミステリーというカテゴリー付けに終わらない鮮やかな小説でした。それにしても金沢は良い町だ!2012/09/10