出版社内容情報
太平洋戦争末期のフィリピン、兵士は本当に敵前逃亡したのか? 軍紀違反を裁くため設けられた旧日本軍の裁判の驚くべき実態!太平洋戦争中、敵前逃亡罪などを犯した兵士を裁くため設けられた「軍法会議」。戦争末期、ここで多くの日本兵が銃殺刑に処されたが、中には「不当に」死刑判決を受けたケースも含まれていた。裁判記録が焼却されて実態は謎のままだったが、元「法務官」が残した証言テープ、未公開資料、遺族・軍関係者への徹底取材から、タブーとされてきた旧軍の闇の部分が明らかになる。
NHKスペシャル取材班[エヌエイチケイスペシャルシュザイハン]
北 博昭[キタ ヒロアキ]
内容説明
太平洋戦争中、敵前逃亡罪などを犯した兵士を裁くため設けられた「軍法会議」。戦争末期、ここで多くの日本兵が銃殺刑に処されたが、中には「不当に」死刑判決を受けたケースも含まれていた。裁判記録が焼却されて実態は戦後、長い間謎のままだったが、元「法務官」が残した証言テープ、未公開資料、遺族・軍関係者への徹底取材から、タブーだった旧軍の「闇の部分」が明らかになる。
目次
第1章 資料発見の衝撃
第2章 二人の法務官
第3章 法務官・馬塲東作が見た戦場
第4章 終わらない遺族の苦しみ
第5章 法務官たちの戦後
解説 軍法会議にみる戦争と法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
94
2016年692冊め。第二次大戦時のフィリピンで壮絶な飢餓の中、食料調達に出かけた青年は敵前逃亡の罪で死刑にされた。21世紀の現在も、周囲の目に怯えながら生きる親族たち。「英語が話せる」ことで敵兵との接触を懸念され、正当な裁判も受けられずに銃殺された兵士の遺族は、ついに取材に応じることはなかった。青年の名前も、お墓には刻まれていなかった。ドイツでは2009年にナチスの軍法会議で逃亡やユダヤ人を匿う等の反逆で罪に問われた人の名誉を回復する包括的名誉回復法が制定されている。日本はどう向き合うのか? (続2016/09/05
nnpusnsn1945
44
戦争末期における軍法会議の実態を描いている。海軍法務官の馬場東作海軍法務中佐と沖源三郎陸軍法務大佐の証言によれば、法務官はもとは文官が担当して司法の独立を守るはずであったそうだ。しかし戦時中の1942年から武官制に変化したことにより、命令から逆らいにくくなってしまった。更に末期では食料を取りに行った兵士を将校が杜撰な裁判で処刑するケースが多発している。本書では馬場中佐と中田富太郎上等機関兵の死刑に多く割かれている。フィリピンのルソン島バヨンボンにて銃殺刑となったが、戦友が現場を目撃していたようだ。2023/01/14
James Hayashi
29
日本軍によって殺された日本兵。それも処刑という最悪のかたちで。殆どない資料、関係者からの証言も歓迎されず。IOTと云ってデジタル化の時代だが、心が通じるのはやはり手書きの手紙。そこから関係者と繋がっていく/軍に徴用され戦争に出向くが、命の保証などない。それ以上に食糧の補給がない。餓死か逃亡か?無策なのは承知しているが、戦後も遺族は後ろ指を差され、長いこと戦後補償も受けられなかった。番組が放映された後に29歳女性のコメント「私たちはあの戦争から本気で学んでいない」 参考「戦後補償裁判」栗原俊雄 2020/08/09
金吾
20
これが実態を表しているのならば、恐ろしい国家と狂気の軍隊だと思いました。法務官たちの自己弁護は致し方ないのかも知れませんが、正しくはないと感じます。2024/10/08
James Hayashi
19
悲惨、悔しさ、卑劣、怒り。さまざまな感情が沸き立つ。日本軍よ。なんのための戦争だったのだ?!食糧が欠け兵士同士での取り合い。餓鬼の世界。人肉食も頷ける。平時の常識が通じないのはわかるが、戦後も彼らの名誉が回復されていないこと、悪しき人間(ここではやむを得ないが)が生き延びている事に腹が立つ。再読。2021/08/26