出版社内容情報
富商の娘を娶り、藩の有力派閥の後継者として出世を遂げる三浦圭吾。その陰には、遠島になってまで彼を守ろうとした剣客・樋口六郎兵衛の献身と犠牲があった。十年後、島から戻った六郎兵衛。だが、二人は敵同士として剣を交えざるを得なくなる……。派閥争いに巻き込まれ、運命に翻弄されていく男たち。彼らは、何を守るために刀を振るうのか。真に大切なものを問う、葉室文学の円熟作。
内容説明
富商の娘を娶り、藩の有力派閥の後継者として出世を遂げる三浦圭吾。その陰には、遠島になってまで彼を守ろうとした剣客・樋口六郎兵衛の献身と犠牲があった。十年後、島から戻った六郎兵衛。だが、二人は敵同士として剣を交えざるを得なくなる…。派閥争いに巻き込まれ、運命に翻弄されていく男たち。彼らは、何を守るために刀を振るうのか。真に大切なものを問う、葉室文学、円熟の遺作。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951‐2017。北九州市小倉生れ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て2005(平成17)年『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。’07年『銀漢の賦』で松本清張賞を、’12年『蜩ノ記』で直木賞を、’16年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
150
久しぶりの葉室作品は、当時はそれなりにあったと言われている「衆道」という淡い情、そして権勢の希求と愛の物語。葉室さんの作品らしく読みやすく、一本筋の通った男の生きざまはカッコいいけど、それが果たして報われたかといえば、まあちょっと悲しい物語なのかもしれません。玄鳥(=ツバメ)さりて。一人去ってしまった葉室さんですが、作品を通じて私たちの心に何度でも戻ってきてくれる…。2021/11/27
のり
59
葉室麟の遺作。改めて豊かな才能が失われた事が悔やまれる。本作は身分も歳の差もある二人の友情を描いた、切なさも残る一冊だった。剣の腕は藩内一なのに軽く扱われる男と、彼に道場で見出され順調に出世していく男の紆余曲折の人生。派閥争いに巻き込まれていく不運。どちらに傾いても絶望しかない。しかし土壇場で命を賭しての…信を貫いた剣志に心打たれる。2021/11/23
えみ
52
哀愁漂う葉室麟の世界観にまた今回も身を投じることができた。人生とはなんと苦しいものなのだろう。彼の歩む道は険しく振り返れば侘しい。しかしどんな窮地に追いやられても、たった一つ愚直なまでに己に誓った「決意」は揺るがず。燕の生き方。剣客・樋口六郎兵衛とその彼に幼い頃から目をかけてもらい、稽古をつけてもらっていた三浦圭吾。二人の運命の歯車は徐々に狂いだす…。藩の派閥争いに巻き込まれていく圭吾に芽生えた感情は2人の運命に何を生む?燕は幸せを運ぶ鳥だと言うのなら、人に幸せを運ぶその燕もやっぱり幸せだったのだろうか。2024/10/12
優希
43
友情を超えた切ない武士の物語と言えますね。圭吾に対する六郎兵衛の献身と犠牲。しかし、後に2人は敵同となり、剣を交えなければならなくなったのが悲しいです。、守る刀は一体何なのでしょう。遺作ということで、最後の魂が入っているのだと言えますね。2022/04/04
てつのすけ
36
葉室さんの作品は、読むたびに清らかな心になる。この作品は、友情とは何なのかを考える内容だ。自分に、このような友人がいるのだろうかと考えたが、残念な答えしか思い浮かばない。現代社会においては、益々このような関係は築きにくくなるのではないかと思う。2021/10/05