内容説明
「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」。始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集。文字同士を闘わせる言語遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出して短編間を渡り歩くルビの旅…。小説の新たな地平を拓いた12編、川端康成文学賞・日本SF大賞受賞。
著者等紹介
円城塔[エンジョウトウ]
1972(昭和47)年北海道生れ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007(平成19)年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞受賞。’10年『烏有此譚』で野間文芸新人賞、’11年早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、’12年『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞、’17年『文字渦』で川端康成文学賞(表題作に)、’18年日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mae.dat
248
又しても文學って奴が、儂の常識の壁を易々と超えて行きおった。何を言ってるか分からないと思うけど、起こった事を理解の範疇で書き記してみる(殆ど理解出来ていない)。小説なので「文字」で文章を表しているのですけど、その文字自体が主人公で生きているの。時々動いたり、姿を変えたりしているみたい。囁き掛けてくるよ。困惑。多分この小説は、文字の意思によって紡がれているのよ。なんとKindleでも読めるんだ。混乱(꒪ω꒪υ)マジカ。(見たこともない)難しい漢字も使われていますが、“適切に”ルビが振ってあるから安心です。2022/11/22
rico
101
言霊、は知ってたが、ひょっとして、文字霊(もじだま)ってあるのか?いや、そんな生易しいもんじゃない。増殖する、変異する、湧き出す。文字はどうやら生きているらしい。人界に溢れ出し、浸食し、やがて世界を支配する、のか・・・?というカオスな雰囲気の12の物語・・・なんだが、詰め込まれたパロディの意味がわからず、何じゃこりゃ状態の私。(終盤の「八ツ墓村」でようやく気付く)元ネタ確認しながら、もう1回読みなおす気力は残ってないが、とりあえず、この不可思議で多様な文字を持つ文化圏に生を受けた幸運を、寿ぐことにしよう。2022/07/28
chantal(シャンタール)
77
いったいこれは何なんだ?読んでる間中、頭の中は「?」で埋め尽くされて行く。これは何かの比喩なのか?物語の意味が全く理解できないのに、でも何だか楽しい!こんな本初めて読んだ!分からないなりに、でも歴史とか仏教とか中国語とか、はたまた横溝正史とかを知ってたらすごく楽しい。色んな小ネタを見つけてはニヤっとしながら読む。それぞれの短編に色んな仕掛けがあって様々な理由で読むのに時間はかかるけど、ほんとに面白い!一体何が書かれているのかを理解したかったら再読しないといけない。いつかする。でも今じゃない。疲れた😓2023/07/24
sin
67
一言で表現するなら図り尽くされた戯れ言である。漢字で表出されたインベーダーゲームまでをも含む気宇壮大なパロディとも表現できる。事実文字は現実と空想の垣根を越える。さて、翻訳に疑問を持った事がある。日本語に訳した時点でそれは別の物語ではないか?「月が綺麗ですね」解釈が翻訳を可能にしているのではないだろうか?ここに日本語でしか表現し得ないだろう物語が綴られているが、その標記の基である中国語なら可能であろうか?かなと云う漢字の異端児を持たない文に如何に翻訳を施すのか?そうした事々も含めて細部まで興味深い物語だ。2021/03/29
hanchyan@飄々
40
♪モジモジしない~で~おねんね・ね♪ というわけで。文字渦。連作短編集のようでもあり長編のようでもあり。各話(あるいは各章)の時系列は渾沌とし、あっちの語り部がこっちの彼だったり。単純な円環ていうよりかは、そこに五芒星を加えて、自在にあっちゃこっちゃが可能な物語構造で、読んでてグルングルンするのが実に楽しい。暴走するルビ、漢字製のアスキーアート(P.295!傑作!)、実在するのかちょっと疑わしいけどそれっぽい漢字、かなのつらなり、等々。めっさ面白かった。『嬴』が変容する様は目が!目が~!ってなったが(笑)2021/05/22