内容説明
45歳の若さで逝った翻訳家で詩人の四条直美が、娘のために遺した4巻のテープ。そこに語られていたのは、大阪万博のホステスとして働いていた23歳の直美と、外交官として将来を嘱望される理想の恋人・臼井礼との燃えるような恋物語だった。「もし、あのとき、あの人との人生を選んでいたら…」。失われたものはあまりにも大きい。愛のせつなさと歓びが心にしみるラブストーリー。
著者等紹介
蓮見圭一[ハスミケイイチ]
1959(昭和34)年、秋田市生れ。立教大学卒業後、新聞社、出版社を経て作家に。2001(平成13)年のデビュー作『水曜の朝、午前三時』がベストセラーとなり話題になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
359
物語の語り手の直美はなかなかに魅力的であり、またひじょうに個性的な女性だ。しかし、その反面「個」を貫ききれない古風さにとらわれてもいる。雙葉中・高からお茶大は、まるで川上弘美のたどったコースそのままだ(大学での専攻は違うが)。物語は、恋愛心理における心の震えを実に見事に捉えている。ところが、別離の理由があまりにも短絡的であり、ひるがえって愛のあり方にも「自己投入」が足りないと感じさせるのは残念だ。1970年の万博のハレを背景にしたことは、大きな成功でもあり、また限界にもなった。2012/09/03
遥かなる想い
152
本の帯に「もしあの時あの人との人生を選んでいたら..」とあり、なぜか惹かれて購入して読んだ。物語は大阪万博で、23歳の直美と外交官の悲恋だが、高度成長時代、冷戦という背景もあって、引き裂かれる恋はとてつもなく切なく哀しい。『人生で何日もあるわけでない特別な一日』という表現が今でも心に残る。
いこ
108
45歳で亡くなった母が、一人娘に遺した4巻のカセットテープ。その内容は驚くべきものだった。才色兼備の母直美は、家の古い体質に反発し、1970年23歳で、半ば家出のような形で大阪万博のコンパニオンになり、そこで運命の男性と出会う。初めて両親に逆らい、この恋を貫こうとした直美だったが…。恋人の出生の秘密。「水曜の朝、午前三時」に起きた出来事。…もしかしたら有り得たかもしれないもう一つの人生、それを考えたことのない人などいないだろう。しかし、そちらに舵を切れた人は少ないと思う。人間の弱さ・切なさを想う一冊。2022/06/08
chiru
103
脳腫瘍を患う主人公が娘に遺したテープ。 それは、娘への伝言であるとともに、叶わなかったひとつのラブストーリー。 謎めいた恋人との別離と結婚後の再会のモノローグを通して、たくさん傷ついても失敗しても、何もしない人生より幸せなのだと、命がけで紡ぐ言葉が教えてくれる。「真摯に生きた」って最期にいえる人生は、後悔を抱えても突き進んだ人生を指すのかもしれない。 プレゼントにもらった本ですが、たしかに誰かに贈りたくなる本だと思いました。 ★4 2018/07/15
紫綺
98
単行本にて読了。あの日、あの時、あの場所で、君に会えなかったら♪・・・小田和正の歌が頭の中でリフレインする。2013/12/28