内容説明
アンカラで“私”は一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティーに誘われて…。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅も、いつのまにか「壮年期」にさしかかり、“私”はこの旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていた―。
目次
第13章 使者として―トルコ
第14章 客人志願―ギリシャ
第15章 絹と酒―地中海からの手紙
対談 旅を生き、旅を書く(高田宏;沢木耕太郎)
あの旅をめぐるエッセイ5
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっせい
68
旅はいよいよ終盤、ヨーロッパに突入。本編はトルコ〜ギリシャまで。スリリングな旅路は相変わらずだが、刺激に満ちたアジア編とは違って、本編で作者も語っているように、終末が見える中で喪失感も垣間見られる。「旅は人生のようだ。」と作者が言うように、ワクワクドキドキだけの旅じゃなくて、そういう下り坂の局面もあるのも人間らしくていいなぁと思うのです。2021/10/21
ゆみのすけ
28
今回はトルコ、ギリシャ、そして地中海を船で渡りイタリアへ向かうところまで。アジアを抜け、やっとヨーロッパへやってきた。どこまでも広がる青い空、深く美しい青い海、歴史的建造物の重みを感じるギリシャに入り、アジアと違う空気を本書から感じた。そして、もう一つ感じたのが作者の長旅からの疲れ。シリーズ初めは旅の新鮮さ、現地の熱気に興奮する様子がガンガン伝わってきたが、旅が進むにつれ、旅の新鮮さ、好奇心が薄れ、迷いが生じているようだ。この先どうすればという迷い。旅をどう締めくくるのか気になる。2025/03/28
chanvesa
26
「旅がもし本当に人生に似ているものなら、旅には旅の生涯というものがあるのかもしれない。(220頁)」商品達との値切りのやり取りを自然に繰り広げる旅の達人は、ゴールか間近になり感傷的になる。ヨーロッパ圏内に入ると旅の終わりを意識せざるを得ない。ダレた雰囲気から寂しさをこの巻より感じさせる。トルコとギリシャの国境を通過する場面も印象的だ。白人七人組のグループの乗る車に乗せてもらった際に、このメンバーが何かを食べる時にみんなに勧めたり、タバコを吸う時に了解をもらうという社会的なルールにマナーだと感心している。2023/12/30
あきあかね
25
長い旅路も次第に終わりへと近づいていく。人生と同じく、旅も幼年期、少年期、青年期、壮年期を経て、老年期へと向かう。軌を一にして、旅の舞台は、熱気と混沌の渦巻くアジアから、安定と衰微をはらんだヨーロッパへと移っていく。季節もまた、旅が始まった春から、いつしか冷ややかな秋の終わりになろうとしていた。 アジアの最後の地であるトルコでは、次のバスが出るのは一週間後と言われ必死に出ようとするバスを追いかける場面や、青ではなく黒いという海に惹かれ「黒海」へと向かう場面など、昔読んだ細部のエピソードが鮮明に蘇ってきた。2021/12/19
eiro
20
本棚の整理。トルコからギリシャに入ったところで、出来事がほぼ起きなくなる。季節は秋から冬に向かい寒くなる。人の交流が激減、薄いものになり著者は旅が青年期から壮年期に入ったと表現する。もともとこの度は観光に意味を見出さない。移動が中心だが、人付き合いやエピソードは欲しかったか。人の、限りあるたった一度の人生で羨ましい時間を過ごされた。今回本棚の整理ということで、沢木さんとはこれでお別れだ。自分の青春にもさようならだ。しかし深夜特急はこれからも夢を持つ若者たちを乗せていく。2023/10/29