内容説明
考える―その一言で表されてしまう行為は、これほどまでに多様なものなのか。ある者にとっては「考える」=「見ること」であり、ある者にとって思考は「歩くこと」と密接に結びついていた。小林秀雄、福田恆存、武田百合子、幸田文、植草甚一ら16人の作家・評論家の著作とその背景を読み込み、それぞれ独特の思考の軌跡を追体験しようとする、実験的かつリスペクトに満ちた評論集。
目次
小林秀雄
田中小実昌
中野重治
武田百合子
唐木順三
神谷美恵子
長谷川四郎
森有正
深代惇郎
幸田文
植草甚一
吉田健一
色川武大
吉行淳之介
須賀敦子
福田恆存
著者等紹介
坪内祐三[ツボウチユウゾウ]
1958(昭和33)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。「東京人」編集部を経て、文筆家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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もりくに
45
雑誌「考える人」の依頼で2000年代初頭に連載されたもので、著者は今年一月急逝した坪内祐三さん。彼は当初、あまりに正攻法のタイトルに珍しくしり込みする(?)が、一回り上の団塊の世代の「未成熟」(!)」に思いをいたし、自分なりの「成熟」を確認するため執筆。(まっとうな)保守主義者の彼が、リスペクトする「考える人」たちの考えを媒介に、自分もまた「考える人」たらんと目指した。表紙に彼のチビた(?)字で、小林秀雄から福田恆存までの16名の「考える人」が並んでいる。自分の「同時代人」と「共振」したかった、と。 →2020/04/10
ホークス
9
坪内祐三が、16人の「考える人」としての作家・評論家について書いた。読む前は何故だか、もっと軽い感じだと思い込んでいた。難解な人や本を解りやすく解説するんだろうと。しかし違った。ちゃんと難解な人や本として、坪内祐三の理解したままが書かれており、却ってそれが面白かった。そしてこの本には、人や本のことを決め付けたり思い込んだりする誰かの話が沢山出てくる。著者本人だったり知人だったり(あとがきの南伸坊も)するが、意外にこの道が、つまりどんな風に決め付けたかを見る方法が、「難解」を理解する早道の様に思えた。2015/07/09
ネムル
7
坪内祐三のなかでの「考える人」像を自身の同時代的な体験として描く、またそれを通して自身の考える営みをぐだぐだのままに描くという二点において、好みは分かれそう。個人的には大好き、ひとまずの読書の指標として意識したい。2017/10/19
緋莢
6
人によっては「見る事」とイコールであったり、別の人にとっては「歩く事」とイコールである“考える”という行為。小林秀雄、田中子実昌、植草甚一、武田百合子、色川武大、吉行淳之介ら16人の評論家・作家の著作を読み込み、それぞれの“考える”という行為を見出そうとする評論集。2014/10/14
うえ
5
十六人の作家などを取り上げ、その考える背景や姿勢について語る。ラストを飾る福田恆存への思い入れが強い。「この連載に登場した十六人の考える人の中で、福田恆存は私に一番身近でした」「1977年頃には、例えば中国で江青らの四人組が摘発され、左翼は退潮期にありました。それでも日本の言論の世界では、まだまだそちら側の知識人たちの声の方が強かった…恆存は、世間の大方の人たちと同様、保守反動に思えました…しかし福田恆存は、小林秀雄よりももっと近代人、あるいは現代人であり合理的です。その合理性があってこその形式なのです」2021/11/22