出版社内容情報
東北地方の旧家・不村家では数代に一度、特別な子供が誕生する。人智を超えた才知を授かることから繁栄の兆しと崇められる一方、「あわこさま」と呼ばれる怪異があると畏れられてもいた。異形の奉公人たちの手で守られる平穏な日常が闖入者により瓦解したとき、人々は思い出す。――あわこさまは、不村に仇なすものを赦さない、と。「水憑き」一族の栄枯盛衰を描く、危険すぎるホラーミステリ。
内容説明
東北地方の旧家・不村家では数代に一度、特別な子供が誕生する。人智を超えた才知を授かることから繁栄の兆しと崇められる一方、「あわこさま」と呼ばれる怪異があると畏れられてもいた。異形の奉公人たちの手で守られる平穏が瓦解したとき、人々は思い出す。―あわこさまは不村に仇なすものを赦さない、と。危険すぎるホラーミステリ。
著者等紹介
彩藤アザミ[サイドウアザミ]
1989(平成元)年岩手県盛岡市生れ。岩手大学教育学部芸術文化課程卒業。2014年『サナキの森』で新潮ミステリー大賞を受賞しデビュー。耽美な世界観を描く精緻な筆致と軽妙なキャラクター同士のやりとりが魅力(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
29
宮城県の山中の集落に、産婆を生業とする一族、不村家には「あわこさま」と言う憑き物がいると言う。あわこさまに妬まれるため身体に障碍を負う者だけを雇い、一族以外で障碍のない者は一人で屋敷内に入ってはいけないなど謎の多い不村家の、戦後すぐから百年程の足取りを描く連作短編。文章が端正である事、会話文が自然である事で初読ながら作者に良い印象を持った。一族の厭わしい運命と、「フリークス」「エレファント・マン」「孤島の鬼」の系譜を引く異形のものたちの哀しみを描く恐ろしくも美しい物語だった。2025/04/07
よっち
29
数代に一度、生前に躰を「お納め」した子が生まれる東北地方の旧家・不村家。異形の一族の昭和から現代に至る年代記を描いたホラーミステリ。人智を超えた才知を授かることから繁栄の兆しと崇められる一方、陰には「あわこさま」と呼ばれる怪異があると畏れられ、特別な子どもの世話を出来るのは同じく異形の奉公人たちのみ。各時代の人物の視点から綴られていく物語はそれこそ時代によって様々で、土地に憑いているあわこさまの力はなかなか強力なものの、あくまで守っているのは家であって、逃れられず積み重なってゆく一族の呪いが印象的でした。2025/03/27
空のかなた
26
異形の者、憑き物筋、産婆と間引き、脈々と続く禍々しい血筋。それに対する村の人々の差別や軽蔑の眼差し。それを耽美で幻想的、そして摩訶不思議なモノガタリを形作っている。怖いとか気持ち悪いという展開ではなく、理解できない禍々しさや正体の分からない「あわこさま」に惹かれながら読み進んだ。この沈殿するような粘着性の感覚は、表紙装丁からも感じ取れる。とにかく不思議な一冊。初読みの作家さん。2025/05/09
イシカミハサミ
14
――東北地方の旧家・不村家では数代に一度、特別な子供が誕生する。 ――奇妙なことに、不村家の奉公人は、すべて異形の者だった。 プロローグの舞台は1898年春。 奇譚の定番に思える始まりだけれど。 その後のエピソードの舞台は、 1978年夏、 1977年春、 1978年秋、 1998年春、 2032年初夏、 20**年春、と続く。 地表をコンクリートで覆って、 片手に端末を持って過ごすようになっても、 今は常に過去の上に成り立っている。 確かにあった、業の物語。2025/04/14
まめ
7
とある憑き物筋の一族を描いた年代記。恐ろしさと美しさと愛憎がぐちゃぐちゃに入り混じった世界観がたまらん。面白くて一気読み。科学技術の発展で怪異がどんどん淘汰されているけれど、全部が全部消えるわけはない。いつか異形コレクションにも出てほしい作家さん。2025/03/27