内容説明
誰にだって、大人になるために忘れなければならなかったことがある。それでもなお、成長した心の奥底にひっそり残る記憶の欠片。それはふとした瞬間に浮かび上がり、胸の中のやわらかい場所に触れて、とうに大人になったはずの自分を困らせるのだ―。女性作家陣が描く、時を経て初めて味わうことができる感情。かつての不完全な思い出が、今の自分を完璧にする、甘美な6篇の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
284
6人の女性作家による競作短篇。最後の2人は初読。チョコレート会社がスポンサーになっていたのか、6篇のいずれもにチョコレートを食べるシーンが登場する。タイトルの「甘い」は、文字通りの甘さと比喩としてのそれをかけた両義的なものということになる。さて、チョコレートという題が与えられて書くという、いわば題詠なのだが、ここに収録された6作の中では川上弘美さんの「金と銀」が一頭地を抜き、格の違いを見せている。反対にその文体から、格調を大いに下げているのが吉川トリコさんだ(いつもながら、ファンの皆様にはごめんなさい)。2017/03/12
ミカママ
218
ううむ、タイトルと帯には惹かれたんだけど。心に引っかかるものがなかった。中では吉川トリコさん、確かに異質。でもこういう作風は嫌いじゃない。2017/05/05
じゃすぽ
23
6つのチョコレートストーリーズ。20代の頃に好んで読んでいたようなストーリーばかりで、とても懐かしかった。短編なのに、どの作家さんも特徴がよく表れている。トリコさんは既読だった。2017/04/30
ひらけん
22
甘い記憶って書くくらいやから、甘い恋愛話を想像したな。でも、読む内に色々な恋愛を知った大人の恋愛話ばかりやった。本の中で「二度目の満月」が一番良かった。バーでしか会わない苗字しかわからない相手に惹かれていく。そして、その距離をどう詰めようかどうやって相手の事を聞き出そうか。その心の内が痛いほどわかる。好きな人には嫌われたくはないが、自分から前に踏み出さないとその関係は進展しない。それが分かっていても相手の心に踏み込む事はホンマに勇気がいる。臆病にかてなる。簡単に好きだと言えたらこんなに楽な事はないからな。2016/06/19
かこりむ
17
面白かった。どの物語のチョコレートも美味しそう。一番良かったのは、吉川トリコさん「寄生妹」。りみ子ちゃんの大らかさが良いなぁ。優等生のカヤ乃ちゃんとのコンビは最強。希望があるラストも好き。「二度目の満月」のことをブルームーンというのだな。ちなみに次は2015年の7月だそう。いいこと、ある、かも。2014/10/12
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