出版社内容情報
「奴は家畜か、救世主か」。文明崩壊後の米大陸を舞台に描かれる暗黒西部劇×新世紀黙示録。小説界を揺るがした直木賞作家の出世作。
ジョアン・メロヂーヤ。メキシコの農園で人と“牛”の間に誕生した美しき奇跡。自らを慕う人々を率い、彼は蟲に巣食われた者を殺戮しつつ流浪する。そして七年後、ワイオミングの大クレーターに居を構えたジョアンたちに、バード・ケイジを首領とする討伐隊が総攻撃を掛ける。そこへレイン一味も絡み……。ジョアンは家畜か、それとも救世主か。神話の結末はあなた自身が目撃せよ。
内容説明
ジョアン・メロヂーヤ。メキシコの農園で人と“牛”の間に誕生した美しき奇跡。自らを慕う人々を率い、彼は蟲に巣食われた者を殺戮しつつ流浪する。そして七年後、ワイオミングの大クレーターに居を構えたジョアンたちに、バード・ケイジを首領とする討伐隊が総攻撃を掛ける。そこへレイン一味も絡み…。ジョアンは家畜か、それとも救世主か。神話の結末はあなた自身が目撃せよ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
68
時代やその背景は違えどまるで中国の戦記もの…なかでも奇書に分類される『水滸伝』を彷彿とさせる漢(おとこ)達の物語だ!如何なる理由で闘うにせよ、もはやここには正義などというものはなく、敵味方、善悪が入り乱れて死闘を繰り広げる!人間の本質は共闘する獣だ!そして、その闘いは後世に歴史と化すが、それは戦い抜いた当事者たちを後目にするかのようで、その評価は決して勝者のものになるとは限らない。2018/06/05
goro@the_booby
64
Ⅲ章はアビアーダ攻防戦の激しい戦いに入りレイン兄弟も巻き込まれて保安官率いる大部隊を迎え撃つ。何のための闘いなのかジョアンは出て来ないし、それぞれが哀しいのだがエピローグはまたなんとも切なく落としてくれるわ。核戦争→蟲→浄化の流れはナウシカかとも思える。Ⅲ章は熱量で押し切られた。ドットが哀しい。2022/11/18
つねじろう
59
ジョン・ウェインばりの規格外のくせ者保安官バード・ケイジ、その保安官に追われる列車強盗のレイン兄弟、悪魔と怖れられながら神とも讃えられ慕われる牛人間ジョアン。各々キャラクターは既視感は有るものの魅力的だし大規模な地殻変動と核戦争で旧文明が滅んだ後の開拓時代的な設定と人喰い蟲も面白い。会話もまあまあ。で其々化学反応なり起こして爆発的クライマックスを迎えるかと期待したんだけど、全て放り出していきなりエピローグって感じでそれは欲求不満。読者を選ぶ小説なんだって。選ばれなかった読者はどうしてくれるんだい。ねぇ?2015/11/06
Sam
56
「流」を凌駕する作品に出会えるとは思わなかった。しかも「流」が自伝的小説だったのに対して本作は想像力の極みともいうべき途方もない作品だし、もっというとこれが「流」以前に書かれていたことにも驚かされた。とはいえ専門家を含め低評価も多いようで、実際自分も作品の時代背景や世界観、登場人物たちの相関関係などがよく掴めず序盤は行ったり来たりしたが、そのあとはもうこの信じられないような神話的SF的ハードボイルド的世界にひたすら没入した。ラストは少々甘いが自分にはとてもしっくりきて、なおさら忘れられない作品になった。2024/11/05
眠る山猫屋
46
レイン兄弟に魅せられた。バードケイジ保安官の悲しみやジョアンの聖性にも打たれたが。ガイもスノーもレスターもいいヤツだったが、ロミオの真っ直ぐな生きざまが特に。主要人物があっさり退場する暴力の連鎖・人を喰うといった倫理観がスルーされた世界はそう簡単には変わらない。だからリセットするという黙示録的な世界は受け入れられないが、そんな世界を生き抜こうとする人間の姿は、やっぱり心をうつのだと思う。ロミオの登場しないエピローグはほんとうに暖かい。2018/12/02