出版社内容情報
塩野 七生[シオノ ナナミ]
著・文・その他
内容説明
若き副帝ユリアヌスは、前線での活躍で将兵や民衆の心を掴んでゆく。コンスタンティウスは討伐に向かうが突然病に倒れ、紀元361年、ユリアヌスはついに皇帝となる。登位の後は先帝たちの定めたキリスト教会優遇策を全廃。ローマ帝国をかつて支えた精神の再興を目指し、伝統的な多神教を擁護した。この改革は既得権層から強硬な反対に遭うが、ユリアヌスは改革を次々と断行していくのだった―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
391
背教者ユリアヌスの巻である。前巻でのライン河防衛戦では、全く未経験であったにもかかわらず、素晴らしい統率力と戦いぶりを見せ、将兵たちの信頼を勝ち取ったユリアヌスが、彼らに担がれる形で帝位に就くことになった。コンスタンティウスとの内戦も覚悟してはいたが(彼がそれを望んでいたわけではない)、幸いにもそれは避けられた。そこまでは良かったのだが、対ペルシャ戦役に東方に向かったあたりから、ユリアヌスに不運の影が付きまとい始める。彼がなしたことは、キリスト教徒にとっては背教者であったが、ローマ帝国にとっては最後の⇒2020/12/03
優希
76
ユリアヌスが皇帝となります。キリスト教振興を廃止したのは、かつてのローマ帝国の精神へと戻るためであったのでしょう。純粋にローマとローマ人のためにその力を発揮して言ったと言ってもいいと思います。その死は早すぎるものでしたが、彼に与えられた「背教者」という呼び方は、輝かしい勲章にも思えます。2018/11/12
KAZOO
64
ユリアヌス帝が、多神教に戻ろうとするのはキリスト教徒からすると復古主義に見えるのでしょうね。ただ彼の政策は非常に理に富んだものであり、彼が長く生きていれば中世の暗黒時代というのは生じなかったのでしょうね。辻さんの小説でもかなりユリアヌスについては非常に立派な人物であるということですが塩野さんも同じなのでしょう。日本だからこのような評価が出てくるのでしょうね。2015/05/14
Y_Michiari
53
皇帝ユリアヌスのキリスト教優遇政策の廃止から、ペルシア遠征による落命までの19ヶ月間を描く。カッレがローマにとっての鬼門である事が良く分かります(苦笑)また、胸甲を付けず戦場を飛び出し槍が突き刺さり死亡した後の、後を継いだ元親衛隊長のヨヴィアヌスも、コンスタンティノープル入場前に暴飲暴食によって死んだ。と有るので、キリスト教の影響は民主政体を蝕み、秘密主義的意思決定の模様が見えます。「言論の自由」とは、この様な秘密主義を防止する意味でも重要です。風通しを良くしなければ責任の所在が不明確になります。2017/03/10
スター
51
今回も面白かった。前線での活躍で将兵や民衆の心をつかんだ副帝ユリアヌスは、皇帝の死去により自らが皇帝に。 当時ローマ帝国内で勢力を伸ばしていたキリスト教徒の影響を抑えようとするが、若くして戦死。死後はさらにキリスト教徒が勢いを増すようになる顛末を描いた本です。2020/08/11