出版社内容情報
塩野 七生[シオノ ナナミ]
著・文・その他
内容説明
ローマの再建に立ち上がったディオクレティアヌス帝は紀元293年、帝国を東西に分け、それぞれに正帝と副帝を置いて統治するシステム「四頭政」(テトラルキア)を導入した。これによって北方蛮族と東の大国ペルシアの侵入を退けることに成功。しかし、膨れ上がった軍事費をまかなうための新税制は、官僚機構を肥大化させただけだった。帝国改造の努力もむなしく、ローマはもはや、かつての「ローマ」ではなくなっていく―。
目次
第1部 ディオクレティアヌスの時代―紀元二八四年‐三〇五年(迷走からの脱出;「二頭政」;「四頭政」;ペルシアとの関係;兵力倍増;帝国改造;官僚大国;税金大国;統制国家;ディオクレティアヌスとキリスト教;ディオクレティアヌス浴場;引退)
著者等紹介
塩野七生[シオノナナミ]
1937年7月7日、東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業後、イタリアに遊学。68年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。82年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。83年、菊池寛賞。92年より、ローマ帝国興亡の歴史を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、2006年完結。1993年、『ローマ人の物語1』により新潮学芸賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
387
バルカン半島の農民出身の軍人ディオクレティアヌスが皇帝に就任。この皇帝の行ったことには功罪があるだろうが、それでもともかくローマ帝国を20年にわたって守ったのである。統治者としての才もあり、また自身の力量の限界をもよくわきまえていたのだろう。ただし、帝国全体を4分割統治するというやり方ではあったが。また彼がミリタリーとシビリアンを分離したこと―これも発想は分割統治と同じだろう―は結果として「ローマ帝国の蛮族化」を招いたと著者は指摘する。そして、この官僚システムは膨大な資金を必要とし、増税へと繋がってゆく。2020/11/11
ケイ
97
皇帝となったディオクレティアヌスは、マクシミアヌスをもうひとりの皇帝カエサルと任命して帝国の西側を任せ、自らはペルシアと対峙する東を守る「二頭政」を行う。7年後には、「四頭政」を実施し、ローマの国境を蛮族より守ることに成功する。しかし、帝国の四方に軍隊を配置することで、兵力は増強するが資金がかかるために税は重くなった。またギリシャ・ローマ的な神を認めないキリスト教徒に対する本格的な弾圧を開始する。22年間皇帝を務めたディオクレティアヌスとマクシミアヌスは引退し、彼らの生存中に第二次四頭政が始まった。2014/12/02
優希
75
ディオクレティアヌス帝の統治によるローマは、再建に動くものだったようです。四頭政を導入することによる動きが興味深いものでした。しかし、軍事費に対する新税制は官僚機構を肥大させるだけというのが皮肉なところです。ローマはかつてのローマと違う方向へと動いていくようです。2018/11/12
KAZOO
75
ローマ帝国も衰亡の兆しが見えるものの、ディオクレティアヌス帝が帝国を2つに分けて、それぞれ正副の皇帝を置いての統治方式にかえました。やはり大きくなりすぎたのと外敵も強くなってきたことによるものである程度仕方のないことかもしれません。ただそれを維持するためには軍隊と官僚機構が必要になり、新税制を導入します。ここら辺は大国の興亡と同じように参考になります。2015/05/04
財布にジャック
74
200ページしかない薄い文庫にもかかわらず、読むのに悪戦苦闘しました。ローマ人の物語は大好きなシリーズでしたが、いよいよローマが衰退していくので、なんだか読むのが苦痛になっています。ローマを再建しようと頑張るディオクレティアヌス帝・・・気持ちはわかりますが、空回りしているとしか思えません。余談ですが、4世紀初頭にディオクレティアヌスが建設した巨大な公共浴場の遺構の一部が使用されている国立テルメ美術館には、是非いつか行ってみたいものです。コミック「テルマエ・ロマエ」の影響ですね。2010/10/18