出版社内容情報
塩野 七生[シオノ ナナミ]
著・文・その他
内容説明
一時はローマの喉元に迫る勢いを見せたカルタゴの将軍ハンニバルだったが、ローマの知将スキピオのスペイン攻略に恐れをなした本国から帰還命令を受ける。それを追うスキピオ。決戦の機運が高まる中、ハンニバルからの会談の提案が、スキピオの元に届けられた―一世紀以上にわたる「ポエニ戦役」も最終局面に突入。地中海の覇権の行方は?そして二人の好敵手の運命は。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
166
やっと終わったポエニ戦争・・・しかしその数年後に起こる事件の後味の悪さは否めません(次世代の暗雲の予兆なのでしょうか?)。そして著者に不要と言わせたカルタゴ滅亡。これら全てに関わったハンニバルは良くも悪くも時代の犠牲者、と言えなくもないのではないかと思いました。では何の犠牲者なのか?おそらくローマ帝国の地中海覇権を確立させてしまった張本人として・・・。2016/10/07
ヴェネツィア
166
この巻の前半は、もはや「ハンニバル戦記」というよりは「スキピオ戦記」とでも言うべきもの。後半では歴史上に燦然とその名をとどめたハンニバルとスキピオの最後が描かれる。どちらも、あまりにも報われない晩年だ。そして、アレキサンダー大王の末裔たるマケドニアも、ハンニバルを生んだ西地中海の覇者カルタゴもついに滅亡する。まことに「盛者必衰」。ただ、ここには『平家物語』に見られるような「滅びの美学」はない。主人公たるローマは、まだまだ発展し続けるからだ。カルタゴの滅亡から46年―ユリウス・カエサルが生まれる。2012/09/12
優希
114
一時はローマに迫る勢いが見えたものの、スキピオの登場により、窮地に陥るハンニバル。決戦の運気の中で追い詰められていくことで、地中海の覇権の行方から目が離せなくなりました。カルタゴ滅亡という運命は最初から決まっていたのかもしれませんが、ハンニバルという英雄がその力を振るう時代があったことを忘れてはなりません。2018/01/21
ケイ
96
カルタゴの本土での、ハンニバル対スキピオの「ザマの戦い」は、スキピオの左腕ともなるマシニッサ支配下とヌミディアの協力もあり、ローマが勝利。カルタゴはローマ連合の一員となり、スキピオは「アフリカヌス」という尊称で呼ばれるようになる。その後、スキピオ率いるローマはシリアに勝ってアジアにも広がるが、スキピオは大カトーによって弾劾され失脚。その4年後にスキピオは病没、同じ年にハンニバルは自殺する。そしてローマに逆らおうとしマケドニア、カルタゴは滅亡し、スペイン全土も領有することでローマは拡大していく。2014/10/08
ntahima
77
“アルプス越え”で名高いハンニバルと言えば、強大なローマ帝国(実はまだ共和制)に敢然と立ち向かった英雄とうイメージだったが、印象が大きく変わった。英雄と言うよりは孤高の人。十六年に及ぶ歳月を戦地イタリア半島で送ったが、天才であるが故、畏怖はされど、参謀・後継者には恵まれなかった。唯一の後継者と呼び得る存在が、若き敵将スキピオだったとは歴史の何たる皮肉か。彼は自分を戒める為、戦地に於いては部下と共に木の根を枕に夜を過ごしたと言う。♪さあさ火を焚け ごろりとままよ 木の根枕に 嶺の月…♪(北原白秋 守れ権現)2012/10/24
-
- 和書
- 飛ぶ男 新潮文庫