出版社内容情報
筒井 康隆[ツツイ ヤスタカ]
著・文・その他
内容説明
いっさい逃げ場なしの悪夢的状況。それでも、どす黒い狂気は次から次へと襲いかかる。痴漢に間違われたサラリーマンが女権保護委員会に監禁され、男として最も恐ろしい「懲戒」を受ける表題作。たった一度の軽口で、名も知らぬ相撲力士の逆鱗に触れた男が邪悪な肉塊から逃げ惑う「走る取的」。膨大な作品群の中から身も凍る怖さの逸品を著者自ら選び抜いた傑作ホラー小説集第一弾。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌「NULL」を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が「宝石」に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’97年、パゾリーニ賞受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
140
筒井氏の自選ホラー短編集。七瀬でも感じたことだが、氏はどこか原始を感じさせるような動物的な匂いがする人間を登場させることが多い気がする。理性の面影を感じさせない人間はグロテスクな恐ろしさに満ちており、言ってみればそれこそが究極のホラーなのかもしれない。マイベストは「蟹甲癬」「顔面崩壊」「走る取的」。特に「蟹~」はタイトル、ブラックさ加減ともに素晴らしかった。ただ個人的に、理不尽の極北をいくような「乗越駅~」「懲戒の~」は、暴力描写がエグすぎて正直引いてしまった感がある。特に猫○は生理的にも無理が…。2016/02/08
優希
92
面白かったです。色々な意味でたまりません。怖さもあるけれど、それ以上にグロテスクの方が勝っている感じがします。後味がいいとは言えませんが癖になりそうな空気が漂っていました。2016/04/29
なる
65
読書会で筒井康隆の本を、ということで紹介されて興味を持った本。短編はいずれも独特な文体でのアプローチをしていて、作者の造詣の深さにまず圧倒される。『走る取的』のベタついた文体で描く主人公像、蜘蛛の巣に捕われる『乗越駅の刑罰』や表題作の恐怖、不穏な民俗慣習が絶妙な『熊の木本線』、筋肉について詳しすぎる『顔面崩壊』、幻想文学に達した『近づいてくる時計』、おなかが空いてくる『蟹甲癬』、怖さとノスタルジーに揺れる『かくれんぼをした夜』、会話劇のシュールな『風』、発想に度肝を抜かれる『都市盗掘団』、全て名作。2022/10/05
こばまり
61
実家より持ち帰り再読。何度読んでも怖いしグロくてうんざりするのに、ほとぼりが覚めるとまた手に取ってしまうのだ。巻末解説にはオーケン氏による初筒井体験エピソードが披露されているが、私にも似たような思い出が。あれは「驚愕の曠野」だった。2023/02/21
まるほ
56
筒井御大自選のホラー傑作集。スピルバーグの初期作品『激突』の相撲版ともいえる『走る取的』を再読したくて手にしました。▼それぞれ味わいが異なる、さすがと唸る作品が10編。幽霊や物の怪の類でない種類の怖さ。1970年代の作品は今では考えられない奔放な書きっぷり。尖っています。▼アリジゴク的なホラーである『乗越駅の刑罰』『懲戒の部屋』は、イヤミスならぬ“イヤホラー”と称すべき読後感の悪さ…。『顔面崩壊』『蟹甲癬』の“グロホラー”もなかなかの味わい。▼第2集はちょっと気持ちを整えてから挑戦しようと思います。2022/11/22