内容説明
江戸の盗賊の小頭雲津の弥平次は、山奥の湯治場で記憶喪失の若い浪人谷川弥太郎を刺客から救う。束の間の出会いと別れ。時は過ぎ、いつしか弥太郎は香具師の元締に剣の腕を見込まれ、仕掛人として夜の江戸の街に暗躍していた。彼の身を案じつつ、その失われた過去を追って、自らも盗賊の跡目争いに巻き込まれながら弥平次の活躍が始まる。彼の探った怪し気な武家屋敷とは…。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923‐1990。東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠
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感想・レビュー
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海猫
112
久々に読む池波正太郎作品。内容がストレスなく頭に入ってくるし、整理されたスタイリッシュな文体は切れ味良い。闇社会の掟と義理人情、交錯する二人の男の人生、男と女のドラマ、といったシンメトリックな構成が奥行きを感じさせる。いまのところちょい展開がスローモーに感じるが、これは下巻に入る前の溜めと見るべきか。2015/08/12
sin
56
再読:)家で何気に手に取ったら止まらなくなった。初見が30年ほど前だがどうやらあらすじは頭に残っているのに、そしてこの小さな活字、それでいてである。さて記憶を失くした侍に引きつけられる裏稼業の男達…作者お得意の“盗賊”そして十八番の“仕掛人”。その筆次第で善人が悪人?いや裏稼業に善人はいないが、根は真っ直ぐという感じで悪事を割り切ってはいるが、そこに踏み外してはいけない一線を持った男達、しかしその一線とやらをどこに引くかによってその人の本性を現してみせる。ここに作者の言わんとするところを感じるようだ。2015/05/25
yamatoshiuruhashi
51
時代物の巧者、池波正太郎作品。などと書きながら、実は池波の小説は「人斬り半次郎」と「堀部安兵衛」だけのようだ。あとは随筆、それも食べ物ばかり。それでも馴染みのある文体にすんなりと没入。たまたま時代劇チャンネルのPRでAmazonプライムでやっていたドラマを見てしまったので、登場人物の顔がその俳優になってしまう。が、ドラマはともかく、本作は期待に違わず時代背景と江戸、界隈の街並みを再現しつつ緊迫感を高めていく。記憶を失った(多分)侍、人を殺さぬ大盗人、地回りの元締めで暗殺も請負う男。その女たち。下巻楽しみ。2024/10/31
スケキヨ
21
TVCMで放送されていて、面白そうな題名だし、大好きな池波正太郎が原作だし読みました。記憶喪失になった侍に二人の男性が関わってきて、関わった二人の男性も個人的に重大なことに関わっていて…という話。まだ上巻のみですが面白い。池波さんの手にかかれば自然に物語の中へ入って行けます。殺陣のシーンでは鍔迫り合いの音が聞こえそう。下巻へ行きます。2014/09/26
Richard Thornburg
14
感想:★★★★ 湯治に来ているのどかな雰囲気と弥平治サンの人情味溢れる対応から、ストーリーの進行に伴って血なまぐさい雰囲気にのまれていきます。 盗賊の弥平治サンは盗賊跡目争いで、はたまた弥平治サンの湯治中に救った記憶喪失の剣客、弥太郎サンは仕掛人として暗躍するという2つのストーリーが同時進行です。 弥太郎サン(話中では「笹尾平三郎」という名も!?)は記憶喪失だけど腕の立つ剣客と言うところがミステリアスでGood! 弥平治サン&弥太郎サンで意気投合して姿をくらましたところで下巻へ。2015/02/22