内容説明
幕末の動乱期を新選組副長として剣に生き剣に死んだ男、土方歳三の華麗なまでに頑な生涯を描く。武州石田村の百姓の子“バラガキのトシ”は、生来の喧嘩好きと組織作りの天性によって、浪人や百姓上りの寄せ集めにすぎなかった新選組を、当時最強の人間集団へと作りあげ、己れも思い及ばなかった波紋を日本の歴史に投じてゆく。「竜馬がゆく」と並び、“幕末もの”の頂点をなす長編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
823
ゲスト参加の読書会の課題図書。新撰組、とりわけ土方歳三を主人公とした物語。武州のバラガキ集団が、幕府の大名格になるまでを描く。近藤や土方、沖田等、個々の人間を描く一方で、大局的な歴史の動きをも見据えていくあたりは司馬遼太郎らしいところか。こうして見ていると、尊皇攘夷といったプロパガンダも、佐幕に傾くのか勤皇に傾くのかは紙一重だったようだ。「時代の沸騰」の中にあってこそ、個々人がまさに個々人として生きていた。新撰組を歴史の視座に置きつつ、物語としての妙味を持たせ得たのは司馬遼太郎の作家的手腕というべきか。 2014/07/30
Die-Go
603
司馬遼太郎本の中で最も好きな本。繰り返し読む用に文庫版を。新選組副長の土方歳三が鬼の剣を振るう上巻はまだ序章でしかない。おゆきとのであいが全てを狂わせるのではなく、整えていくのだろう。★★★★★
遥かなる想い
509
土方歳三を描いた作品。憎まれ役が多かった土方歳三を主人公にもってきたところに本作品の面白さがある。実質新選組を動かしていたのは、土方歳三であり、剣にとりつかれた最後の生き様は読み込まれる感じがしていた。2010/07/31
酔拳
439
土方の多摩時代の、エピソードが書かれています。土方の若いころの女性関係までも書かれていておもしろい。その後、京へ行くことになり、新選組結成という流れの中で、芹沢さん粛清や、池田屋事件など、政治事象にからめて、それぞれの人物像が描かれていて、興味深かった。司馬さんが、土方が、学才のある人が苦手と分析しているところが、なるほどと思わされた。土方は女に恋をしないことで有名だが、この本では、お雪という女性に恋をし、お雪との逢瀬が描かれています。下巻で、お雪とどうなるか気になります。2019/04/01
そる
371
47年前文庫初版で、人気作だし映画化で⋯。私には「そんなにか?」と理解し難い。土方歳三の不器用さ、近藤勇のお調子者っぽさ、沖田総司の人懐っこいけどクールなところ、人物は魅力的だし、心情的には結構分かる。しかし時代のせいなのか些細な事で人殺しすぎ。これだけやっても罪にならないのね、新撰組だから?現代だったら大量殺戮で死刑になるよね?「(略)われわれはもともと、攘夷の魁になる、という誓いをもって結盟したはずではないか。そのはずの新撰組が攘夷決死の士を求めては斬ってまわっている。おかしいと思わないか、沖田君。」2020/05/13