感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
26
天下泰平の名の元、多くの大名を取り潰し多くの武士が職を失い浪人となった。生きる術を失った多くの浪人が、由井正雪を立てて蜂起を企てた。そもそもこの事件自体が幕府が創作したフィクションとも言われる不確かのものを、転じて小説として新たなドラマを作り上げた。 故に伏線も引き放題だし、人物相関も繋がりすぎる感も。加え正雪自身より周りの人物のドラマに費やされる。本題は最大多数のための犠牲、 つまり悪とされた側と、その悪を決めた為政者こそが、悪ではないかという提示だけども、そんな簡単なものかとも思えてしまう歳になった。2020/12/31
Melody_Nelson
5
下巻の方が面白かった。もともとの事件については歴史的に明確でないようなので、いくらでも書きようがあると思われるが、著者はこのように描きたかったのだろう。正雪についてカッコ良く書かれ過ぎではあるけれど、大阪の陣を終え、島原の乱に至り、徳川体制が磐石になる江戸初期の様子が伝わってくる。全体的にややエンタメ性に過ぎた感があり、含蓄のあるセリフなどもあったが、個人的にはさほど響かなかった。2018/10/28
うたまる
5
「丸橋、――人間として自分だけが満足すればいいという生き方は誤りだ。もっとも多数の人たちと幸不幸をわかちあってこそ、人間らしい生き方といえるだろう」……天下平安のため浪人を弾圧すべしと考える松平信綱。同じく天下平安のため浪人を救済すべしと説く由井正雪。現代の読者なら後者に共感を示すに違いない。しかし慶安の変は封建時代だ。侍が武力でもって支配していた理不尽な時代に、彼の言説が通用したかどうかはかなり怪しい。それでも、誇りに思う。現代へと至る本邦思潮の流れの中に、正雪のような先駆者がいたことを。2017/05/11
ゾウ
5
江戸時代の人物、由井正雪を主人公にした小説。「ながい坂」の三浦主水正に考え方や姿勢がかなり似ている。戦乱の時代が終わり、時代に合わなくなった浪人たちの悲哀が描かれている。中盤くらいからヨーロッパの革命のような雰囲気をもちはじめるが、この小説での由井正雪はあくまで戦うよりも、しぶとく幕府に訴えかけることを選ぶ。先を考え、じっと耐え抜く姿勢に、人生の教訓が含まれているような気がした。2013/06/25
りんご
4
歴史で習う油井正雪の乱。武士の不満故の乱と習ったけれども,この本では正雪はあくまでも乱を起こす気はなかった。。。浪人の再就職先を真剣に考えた人2022/05/03