内容説明
かつて電車で目にした、席を譲られた老紳士の優美な仕種。我が家に家出娘を迎えに来た父親が農村の事情を語る言葉の奥深さ。結核による死を覚悟した頃を思えば感じる、今この時に生きる幸せ―。気取らず、気負わず、殊更には憂いを唱えず。いつも心に普段着を着て、本当に知った人生の滋味だけを悠悠閑閑と綴ってゆく。静かなる気骨の人、吉村昭の穏やかな声が聞こえるエッセイ集。
目次
1 日々を暮す(予防接種;ニンニンゴーゴー ほか)
2 筆を執る(歴史小説としての敵討;不釣合いなコーナー ほか)
3 人と触れ合う(味噌漬;変人 ほか)
4 旅に遊ぶ(朝のうどん;一人で歩く ほか)
5 時を歴る(床屋さん;雪の舞うふる里 ほか)
著者等紹介
吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927‐2006。東京日暮里生れ。学習院大学中退。1966(昭和41)年『星への旅』で太宰治賞を受賞。その後、ドキュメント作品に新境地を拓き『戦艦武蔵』等で菊池寛賞を受賞。以後、多彩な長編小説を次々に発表した。周到な取材と緻密な構成には定評がある。主な作品に『破獄』(読売文学賞)、『冷い夏、熱い夏』(毎日芸術賞)、『桜田門外ノ変』、『天狗争乱』(大佛次郎賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
94
吉村小説との初出会いは、奥様の津村節子さんよりだいぶ遅く、5年前に読んだ『高熱隧道』です。まだ日が浅いのですが、既読の5冊はどれもその迫力に圧倒されました。この度、エッセイを読んで、小説で描いていた彼へのイメージを覆す、ナイーブな吉村さんに出逢いました。「普段着」の吉村さんが書かれたエッセイは、するどい観察眼と思いやりのある優しい人柄が滲み出ていて、とても読み心地が良かったです。2022/09/13
バイクやろうpart2
55
吉村昭さん作品12冊目です。エッセイは2冊目ですが、これまで読んだ作品の生い立ちに触れることが出来て良かったです。『史実をことごとくあさり、その堆積の上で小説を書く』響きます‼︎。これからも読み続けたい作家さんのお一人です。2019/01/27
mondo
48
吉村昭がどうして、この小説を書こうと思ったのかとか、読者にとって一番知りたいところ。読み終えた小説のあとがきをあらためて、読みながら、回想できる時間でもある吉村昭のエッセイ。決まって、寄席で落語を聞くように、まくらがあって、いつのまにか、話しに引き込まれてしまうところがあって、すぐに読み終えてしまいます。これが癖になるんです。2021/01/29
KAZOO
48
あまりこだわりのないエッセイです。テーマはあるようでない感じになっています。いつも作品関連や歴史のエッセイが多いのですがこの本は様々な領域を含んでいます。確かに表題が合うのかもしれません。さらっと読めてしまう感じがいいと思いました。2014/11/01
けぴ
45
今まで発表された吉村作品の創作秘話を中心にした自分史的なエッセイ。ノンフィクションに徹する厳しい一面がある一方、飲むのが好きであちこちに馴染みのお店があったようです。あらためて自己が確立した素晴らしい作家であったと感じた。2024/09/20