出版社内容情報
短編推理小説の第6集。平凡な永い人生を歩き、終点に近い駅路に到着した時、耐え忍んだ人生からこの辺で解放してもらいたいと願い、停年後の人生を愛人と過ごそうとして失踪した男の悲しい終末を描く「駅路」。邪馬台国の謎を追究する郷土史家を描きながら、“邪馬台国論争”に関する著者の独創的見解を織り込んだ力作「陸行水行」。他に「ある小官僚の抹殺」「万葉翡翠」など全10編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
67
松本清張の推理小説の短編集。政治家の汚職の鍵を握る官僚が自殺した背景に政商の存在を匂わせる「ある小官僚の抹殺」が秀逸。さえない窓際族が憎い同僚を殺すために会社を辞めて7年後に完全犯罪を果たすも思わぬところからほころびが生じる「捜査圏外の条件」、妻と愛人の恐るべき共謀を描く「薄化粧の男」など。翡翠を求めて日本海の糸魚川に向かう様子が旅情を誘う「万葉翡翠」、邪馬台国の論争に著者独自の見解を忍ばせた「陸行水行」といった事前の知識が相当必要な作品もあり、清張のカバーする分野の広さを感じさせる一冊ともなっています。2020/10/19
i-miya
64
2014.01.09(12/24)(つづき)松本清張著。 01/08 ◎『白い闇』(つづき)。 信子さん、すまないことをしました。 夫の精一に隠れた女、田所常子がいるという事実。 三. 急にはっとなった。 夫はいつも予定より、三四日遅れて戻っていた。 手紙を信吉、精一に頼まれて代わりに受け取っていた。 精一には抵抗できなかったのだ。 入れ違いに届いた信子から精一への手紙。 「一生恨みますよ、捨てたら死ぬ」「わたし、青森にいくわ」 2014/01/09
i-miya
52
2014.02.27(01/24)(つづき)松本清張著。 02/26 (P096) ◎『ある小官僚の抹殺』。 汚職。 利益者が、なぜ、破壊者になるか。 利益者が損失者になったことを意味する。 その電話のかれ声の主、-白川健策の古文の一人だろう。 連合会理事長、沖村喜六が公金600万円を代議士岡村亮三ほか、代議士に贈賄した。 輸入の原糖割当に手心を加えてもらうため。 かれ声の主。 この600万円の大部分が白川のところへいく約束だった。 2014/02/27
i-miya
50
2013.11.24(11/24)(再読)松本清張著。 11/24 (解説=平野謙) 『魏志倭人伝』→横光利一『日輪』。 『陸行水行』で初めて邪馬台国論争を知る。 『黒革の手帖』には、「創作ノート」があり、「邪馬台国論考」事件、と記されてあった。 恐らく小倉在住のときからの関心であったに違いない。 ベッド・ディテクティブ手法。 (本文) ◎『白い闇』。 一. 信子の夫、精一は、S3〇年六月、東北、北海道へ主張するといって出かけたまま失踪した。 2013/11/24
はちてん
35
昭和20年代を舞台にした短編推理小説集。移動手段が夜行列車だったり連絡が電報だったり、今がどれだけ小便利に消耗しているのかと痛感する。でも、この時代には戻れないことも自覚する。生活手段が変化しようとも人の業は変わらないものかもしれない。妬み不安不信、自己嫌悪。犯罪の動機は根本で不変だろう。数編はドラマや映画の原作になったようだ。安定の松本清張、細切れの読書時間しかとれなかったので短編集拝読。2014/02/12