内容説明
これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません―生前唯一の童話集『注文の多い料理店』全編と、「雪渡り」「茨海小学校」「なめとこ山の熊」など、地方色の豊かな童話19編を収録。賢治が愛してやまなかった“ドリームランドとしての日本岩手県”の闊達で果敢な住人たちとまとめて出会える一巻。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
420
かなり読むのに時間かかった。表題作は何度も読んだことあるがそれ以外ほぼ初読み。「土神ときつね」の土神とか、「楢ノ木大学士の野宿」の楢ノ木大学士とか何故突然キレるのか理解し難いし、「ひかりの素足」は切ないし怖いし、「月夜のでんしんばしら」も怖い。新潮の宮沢賢治シリーズでは一番難解かも。表題作と「茨海小学校」、「狼森と笊森、盗森」あたりが好き。「「ここへ畑起こしてもいいかあ。」「いいぞお。」森が一斉にこたえました。みんなは又叫びました。「ここに家建ててもいいかあ。」「ようし。」森は一ぺんにこたえました。」2020/12/19
ヴェネツィア
251
今でこそ宮沢賢治を知らない人もいないが、生前にはほとんど認知されることがなかった。この作品も、賢治は「イーハトヴ童話」としてシリーズ化の構想を持っていたようだが、売れることも注目されることもなかったために、これ1作しか刊行されていない。ここには、自然への圧倒的な共感と、その中に生かされていることの畏怖が、痛切な、時にはアイロニカルな響きで語られる物語群がある。人も動物も植物も等価だ。そして、夜の空には圧倒的なスケールで星が輝いている。後年の『銀河鉄道の夜』などにつながる賢治童話の最初の結実がこれだ。2013/04/04
風眠
170
宮澤賢治を読む時は、頭で考えてはいけない、意味や暗喩を探ってもいけない。擬人化された星や風や石や植物や動物、妖精のような妖怪のような正体不明のもの、宮澤賢治の心と頭に繰り広げられた世界が宮澤賢治の指先から零れ落ち、文字になり、物語になる。草の匂い、雪の冷たさ、夢の続きのような死生観。ただ感じるだけでいいのだ。「これらのちいさなものがたりの幾きれかが、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」序文に込められた宮澤賢治の想いが愛おしい。井上ひさしの解説が美しく沁み入る。2016/02/10
ehirano1
158
表題作について。ユーモラスな作品かと思いきや、ラストの文面でそれが間違いであったことを思い知らされて、改めて本書の意図するところを考え込むことになりました。おそらく、あまり気にしかなかった箇所にメタとしてさり気なく置かれているように思います。読後に新たに楽しみになるという貴重な体験でした。2025/04/26
青葉麒麟
127
相変わらず方言がキツいので何言ってんだが判らない時もしばしば。本当に独特なリズム感だなぁ♪2012/01/17