感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
12
美しきもの…麗しきではなく美…はて絵画鑑賞の極意でも?かと手にする。アルハンブラ宮殿、713年イスラム教徒が都したアルハンブラの思い出にみるのは宮陰謀の800年間、から始まり、ドミニコ会士フラ・アンジェリコの受胎告知の絵に「主はなんぢ女の中に祝さられた」と信仰へのフィクションを「心しておりました」とつくり上げるまで。氏がアジア・アフリカ作家会議に歴欧し訪ね生の芸術を前に感じたこと。ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作品から絵をとおした先にいる昼の現実と夜の信仰のラ・トゥールには、そうなのかと膝を打つ。2023/05/22
みつ
7
1960年代に旅の途上で出会った「美しきもの」を巡るエッセイ。海外旅行がまだまだ高嶺の花だった時代、取り上げられるのは基本的に現地に足を運ぶしかない建築物のほか、絵画では万人に受け入れられる19世紀から20世紀初頭のものがすっぽり抜け落ちており、著者の言によれば「人間存在というものの、無限な不気味さを・・告知」させるものが中心。特に印象が強いのは、スルバランの静物画のような宗教画と、ベラスケスの視ることと視られることの関係性を突き詰めた「ラス・メニナス」、同じく「純粋な水」を表現した「セルビアの水売り」。2021/03/17
テイネハイランド
6
「ゴヤ」の評伝など西洋美術にも造詣が深い小説家堀田善衛の美術ガイド本。ヴェラスケスの名作「宮廷官女像」について語ったエッセイ「ヴェラスケスの仕事場に私の派遣したスパイ」が出色の出来。また、ジュルジュ・ド・ラ・トゥールが、「大工の聖ヨセフ」のような感動的な絵を描いていながら、とんでもないワルだったというのが面白い。文章を読んでいて、堀田さんの絵の見方を完全には理解できないところも多かったけれども、まあ読んでよかったかなとは思う。2015/09/19
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