内容説明
雪屋のロッスさんは、トラクターに似た造雪機に乗って、ほうぼうの街をまわります。大晦日、誕生日、スキー大会、クリスマス。ロッスさんの雪は、結晶のかたちに工夫がこらされ、通常の三倍長持ち。さて、ある冬の夜のこと―。「なぞタクシーのヤリ・ヘンムレン」「調律師のるみ子さん」「犬散歩のドギーさん」「見張り番のミトゥ」…この世のふしぎがつまった31の小さな物語集。
著者等紹介
いしいしんじ[イシイシンジ]
1966(昭和41)年大阪生れ。京都大学文学部仏文学科卒。’96(平成8)年、短篇集『とーきょーいしいあるき』刊行(のち『東京夜話』に改題して文庫化)。2000年、初の長篇『ぶらんこ乗り』刊行。’03年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞受賞。京都在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Rin
52
いしいさんらしい短編集。一つひとつの物語はとても短いものが多いけれど、不思議と心にすとんと落ちてきて足跡を残していく。現実も幻想も混ざり合っている世界。雪屋に果物屋、警察官に調律師。絵描き屋に風呂屋、クリーニング屋。誰もが悲しいこと、苦しいこと、やるせないことがあるけれど、それに柔軟に向き合いながら生きている。動物たちが警察官だったりと、読みながらあら?と途中で気づくと彼らが頭にふっと浮かんでくる柔らかな世界はさすが。一気にではなく、気ままに手に取って読み進めたくなる一冊でした。2020/01/24
チアモン
47
1つ1つが短編でとても読みやすかった。それぞれの物語が不思議で雰囲気が違く、それぞれの世界観があり、さすがいしいさんと思った。2019/12/21
これでいいのだ@ヘタレ女王
24
岸本佐知子、クラフトエヴィング商會のような魔法の世界を散りばめた31の小作品集。不思議な世界を散歩してみたくなったら どうぞ2015/07/03
masa
24
どこか懐かしく優しさを感じさせるも、同時に寂しさ、哀しさをも寄り添い共にあるような30と1の掌編集。人の温もりをしみじみと感じさせる小さな物語。この世の次元をちょっとズラしたふしぎな世界を覗き見ている感覚になる。『何々の誰々さん』として、呼ばれる響きをじんわりと感じながら、自身の仕事の日々を思う。微睡むような余韻に包まれながら。そっと息を吐いてゆっくりと深呼吸をするように。2015/03/29
atori
22
さまざまな生業を持つ、いろいろな人(たまには人じゃないひとも?)達の短編30編。どれも味わい深くて大好きです。特に「なぞタクシーのヤリ・ヘンムレン」には、立ち向かう深い勇気をもらえ、「警察官の石田さん」はコミカルでくすりと笑わされました。どれを読んでも、それぞれの味があり、ほんのりファンタジックで、人間臭く、どこかもの悲しい。短い物語の中に「人生」があって、ひらいたら引き込まれずにはいられない一冊です。2014/09/04