内容説明
愛は奪う本能、吸引するエネルギーである。―『白樺』創刊に携わり、わが国最初の実存主義者とも言われた有島武郎の生は、近代日本の青春の縮図でもあった。「本能的生活」の追求者、新しい女性論の旗手、広大な私有地の無償解放、婦人記者との心中など、波瀾のドラマのさなかで書き綴られた深い思考の足跡を、文庫本未曽有の規模で収めた、初の評論集大成。
目次
二つの道
も一度「二の道」に就て
叛逆者(ロダンに関する考察)
「お目出度人」を読みて
草の葉(ホイットマンに関する考察)
クローポトキン
ミレー礼讃
芸術を生む胎
自己の考察
武者小路兄へ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パフちゃん@かのん変更
24
昔読んだ本が出てきたので、捨てる前に登録。1974
蛇の婿
17
たかが100ページと侮るなかれ、いや読むのに実に実に苦労した本でありました!凄い難しい!泣いちゃう!50ページぐらい読み進んでやっと『愛』が出てきて、そこから先は少し読み進めるのが楽になりましたが、それでも集中して読んで意味を咀嚼しないとチンプンカンプン極まりないw …現代でこそ世間様に『個』を主張するのは難しいことではありませんが、明治や大正時代においてやはり難しいことであり、有島の言う『本能的生活』はそういう『個』を主張したいと言うことではなかったかと私は読み取りましたが…偉い先生に鼻で笑われるかなw2015/06/02
綿菓子
1
愛は与えるものであるのか。有島武郎は「惜しみなく奪うもの」と答えた。愛を誰かに向けることでどれだけ自分が幸福になれるだろう。それは愛を向けた他者から奪ったものであり、したがって愛は奪うものである。あの娘が笑顔になれば、自分もきっと嬉しい。これは誰にとっても変わらないだろう。2010/10/15
acyapon
1
そうだ。愛は与えるのではない。奪うものなのだ!!
ころっぷ
0
この作家にとっての理は実践であり、その死は語られる通りの本能的生活の末路だったのかは誰にも答えが出せない。百年後の読者にとっては当時の社会の挟小さと硬質さとを想像するに難いが、何処までも純心で、真っ直ぐだった作家の生き様には同情と尊敬の念を拭えない。苦しみと悩みの中の暗中模索が成し得た奇跡的に美しい独白のドキュメンタリーは、時を経ても読む者に強い衝撃と後遺症をもたらす。2016/04/19