出版社内容情報
ひとは過ちをどこまで、赦せるのだろう。不義の子・謙作の魂の昇華を描破した、日本近代文学の最高峰。
祖父と母との過失の結果、この世に生を享けた謙作は、母の死後、突然目の前にあらわれた祖父に引きとられて成長する。鬱々とした心をもてあまして日を過す謙作は、京都の娘直子を恋し、やがて結婚するが、直子は謙作の留守中にいとこと過ちを犯す。苛酷な運命に直面し、時には自暴自棄に押し流されそうになりながらも、強い意志力で幸福をとらえようとする謙作の姿を描く。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
142
主人公の出生の秘密はエゲツナイのですが、これを知ってから始まる苦悩はもはや地獄で、ベジータ(DB)の「本当の地獄はこれからだ」の顕在化でした。しかしながら、その地獄的経験でさえも許した大山の頂上からの景色とは一体どのような景色なのかと思う一方、これは地獄を経験した者にしか見えない景色かもしれないと思いました。2024/07/08
新地学@児童書病発動中
137
作家の時任健作が、自分の身に降りかかる困難を克服して、澄みきった心境に達するまでを描く。志賀直哉唯一の長編で日本文学の代表的傑作と言われている作品。500ページを超える大作だが、一気に読めた。この小説の素晴らしさは文体の中にある。簡潔で雄勁な文体で読みやすい。華麗な美文からは程遠いのだが、人間的な温かみを感じた。私たちが日常生活で使う言葉も丁寧に磨き上げれば、このような文章になるのだ。散文の手本として、芥川龍之介をはじめとする多くの作家が志賀直哉の文章に傾倒したのがよく理解できた。2015/08/16
chantal(シャンタール)
94
志賀直哉唯一の長編。自身もずっと父親とは不和であったため、主人公謙作もそんな境遇の中で語られる。不和の理由は不幸な出生の秘密があったからなのだが、人への好悪が激しく、すぐ不愉快になるこの人物に私もちょっと不愉快😅若い彼が色々な問題にぶつかりもがき苦しむ様が暗闇を手探りで進むような人生と言う事なのだろう。東京、尾道、京都、城崎、大山でそれぞれ過ごす際の風景描写が素晴らしく、どこも思い入れのある場所だけに、目の前にその風景が広がるようだった。特に大山での描写は涙なしには読めない😭2020/11/21
榊原 香織
79
風景描写がうまいですね。なんとなく読まされてしまいます。 昭和な感じです。 主人公(作者)性格悪いなあ、物語はあんまりだなあ、と思いながらもそれなりに面白く。2023/12/19
カブトムシ
77
「暗夜行路」は、前編は大正の後期に比較的早いペースで書き上げました。従って、昭和の初期の円本(改造社が発行した廉価の文学全集)には、この前編と大正時代の短編が収められました。ところが、後編は、なかなか筆が進まず、長い年月を要しました。彼は、昭和2年の夏信州に滞在し、後編の一部を執筆しています。その後志賀直哉全集を企画した改造社の山本さんが、「暗夜行路」完結を勧め、これに応じ、完成したのです。この全集は、昭和12年ごろの出版と記憶しています。志賀直哉の代表作ですが、私のような「和解」を上位に置く人もいます。