出版社内容情報
夫は毎晩のように泥酔する。一歳の娘がいるのに、なぜ育児にも自分の健康にも無頓着でいられるのだろう。ふと、夫に父の姿が重なり不安で叫びそうになる。酒に溺れ家庭を壊した父だった。夫は、わたしたちはまだ、立ち直れるだろうか――。家族だから愛しく、家族だから苦しい。それでもわたしが夫に、母が父に、父が人生に捨てきれなかった希望。すべての家族に捧ぐ、切実なる長編小説。
内容説明
夫は毎晩のように泥酔する。一歳の娘がいるのに、なぜ育児にも自分の健康にも無頓着でいられるのだろう。ふと、夫に父の姿が重なり不安で叫びそうになる。酒に溺れ家庭を壊した父だった。夫は、わたしたちはまだ、立ち直れるだろうか―。家族だから愛しく、家族だから苦しい。それでもわたしが夫に、母が父に、父が人生に捨てきれなかった希望。すべての家族に捧ぐ、切実なる長編小説。
著者等紹介
一木けい[イチキケイ]
1979(昭和54)年、福岡県生れ。東京都立大学卒。2016(平成28)年「西国疾走少女」で「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。受賞作を含む連作短編集『1ミリの後悔もない、はずがない』は、デビュー作にして大きな話題となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やも
80
ヒリヒリする。アルコール依存症の父を持つ千映。夫となった宇太郎もアル中一歩手前、乳飲み子を抱えて千映はギリギリの毎日だ。現在の千映、幼少期の千映、千映の母、父と視点が変わりながら進む。全話で強烈に感じたことは「分かってほしい、寄り添ってほしい」って曲がりなりにも皆が感じてたこと。なのにうまくいかなくて、酒に逃げて。家族からも逃げて。読みながら何度もがっくりしちゃって、秋代と恵が出てくるとホッとしたな。愛って難しいね。幸せな時もあったのに。少し余裕が産まれてきてるラストに、明るい未来を信じたくなった。2025/01/06
TAKA
51
苦しいなあ、本当に全部ゆるせたらいいのにね。アルコール依存症は周りの家族が苦しい思いをしなければならない、本人も苦しいんだろうけど飲めば忘れてしまうんだから苦しいというよりかは憐れだよね。母親にしても祖母にしてもそない重大に感じてないとこが娘にしてみたら歯痒いだろう。夫に当たるのも理解はできるな。家族だから苦悩し、手離すこともできない。内面は娘が父に依存していたんじゃないかと。2024/09/17
Shun
41
読むのはデビュー作以来となる一木けいさんによる連作短編集。読み始めるとしっとりと胸の奥に響く何か心地よい感覚が芽生えてくるようです。書いている内容はとても辛く、叫びたいけれど誰も助けてくれないような切々としたものなのに何故だろう。そして読んでいると感じる、この感覚は知っていると。何かと生きづらい世の中と言われるこの現代で、その表し難い痛みをこの作家は表現してくれているように思います。また連作短編という形式も実にしっくりきていて良いですね。2023/04/04
よっち
37
生まれたばかりの娘・恵と一日中向き合い、仕事の苦しみから酒に逃げる夫に苦悩する千映。安心が欲しいだけなのに、あきらめて生きる癖がついた、明日何が起きるか予測がつかない日常とその過去を描く物語。言葉が通じない小さな子供と一日中向き合うだけでも大変なのに、酒に溺れたびたび何かやらかすようになった夫に振り回される日々も突き刺さりましたが、それ以上にアルコール依存症だった父と家族の歪んだ関係、それでも希望を見出したくなる気持ちが切なくて、上手くいくようになるといいなと思わずにはいられない結末がとても印象的でした。2023/04/03
エドワード
33
千映の夫の宇太郎は、下戸なのに毎夜酒を呑んで泥酔する。一歳の恵の保育に家事に忙殺される千映の目に、アルコール依存症だった父親の姿が重なる。父親は勤勉で知的だったが、一日たりとも酒を離せない人だった。酒を呑むと暴君に変貌し、家庭は荒れた。アルコール依存は本当に怖い。リアルに描かれる、知恵が働く父親の暴言、妄想、執着。専門病院へ入院させても、治らない。本人ももちろん苦しんでいる。だから、父との絆を断たない千映。愛に始まり愛に終わる。ここまで愛される父親が羨ましいよ。解説の桜木紫乃さんの文章がまた極上なのだ。2024/01/17
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