内容説明
兄が猛虎になるなら、己は支える龍となる―。大うつけと蔑まれる信長のなかに、弟信行が見出した比類なき強者の資質と、猛虎の意志。だが真の覇者となるには、何かが決定的に欠けていた。兄の弱さに気づいた信行は、密かに身命を賭けた策に出る。すべては兄のために。信長の正室帰蝶を巻き込んで、信行最後の大勝負が始まった…。定説を覆し、誰も描かなかった歴史の真実を掴む傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
149
織田信長の弟である織田信行の物語。更に信長の正室のお濃にもスポットを当てている。あくまでも作者の解釈での世界であるが、史実はこうだったんではないのかと思わせ、本当にそうであってほしいと思う見事な物語。信長と信行の和解から、話が面白くて、ページをめくる手が止まらなかった。信長と信行の仲は、実際はわからないが、もし、この物語のような信長だとしたら、画竜点睛……確かにその通りだと思う。その後の本能寺の変が起こるのも頷ける。信行の非情さは、兄を慕い、思ってこその行動。その行動が切ない。全く不器用な兄弟だなあ。2023/06/11
納間田 圭
48
教科書では…兄・信長に粛清されあえなく消えた弟。存在感が薄い。大河ドラマ内でも…兄の目の前で毒殺だった。史跡上でも…名前が信行なのか信勝なのかハッキリしてない程どうでもいい雰囲気。しかし…さすが小説、この手があったか!とても斬新…。おおうつけと呼ばれた若い頃の兄・信長が天下統一を目指すに足らなかったのは非情さ。それに気付いた実は天才肌の弟・信行。「兄が猛虎になるのなら…自分は猛虎を支える龍になろう」と誓う。そのお陰でなのか…その後はご存知の大躍進大殺戮が始まった…歴史の通説を180度ひるがえすストーリー…2020/10/01
えみ
36
証拠が残されている史実だけでは埋められなかった空白、歴史の狭間。その狭間を残したまま、定説は語られる。謀反を起こした弟信行を殺した信長。そこに鋭く斬り込んだのが見事の一言に尽きるこの小説。二人の心情が定説の背景に上手く溶け込んでその歴史の狭間に形よく嵌っている。歪だが純粋で、純粋だから残酷で、荒々しくも優しい兄弟愛が胸を打つ。通説に風穴を開けるような新しい織田兄弟の真実を描く歴史小説。猛虎になる信長を支えようと龍になる信行。その間をひらひらと舞う慈愛に溢れる蝶。3つの魂が重なり合う時、最強の男が誕生する!2020/09/11
金吾
24
◎信行が主人公の本は初めてです。相剋から和解し兄を補佐しようとしながら、叶わなくなってからの決意が現代風に考えるとあり得るように感じました。乱世を生き残るための必要な要素を失ってしまった信長を覚醒させるためのラストまで面白かったです。2024/08/02
タッキー
13
書きたいことが多くて。とにかく素晴らしい。まず目のつけどころ。このタイトルから何を想像するか?全く分かりませんでした。信長の弟の信行が主人公。信長モノが多い中、尾張統一前の時代で、かつ信行が主人公というのは珍しい。謀反を起こすことになる信行。前半は信長に敵対する信行、後半は必死で支えようとする信行、そんな信行がなぜ謀反を起こすことになったのか。そして最期を前にした信行の決意と覚悟には感動の一言!一気に信行ファンになりました。それにしても霧島兵庫の作品は熱くて面白い。歴史小説好きの人には是非オススメです!2021/11/20