内容説明
生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの回りにはいつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
737
谷崎といえば、『春琴抄』や『細雪』などがその代表作にあげられ、往々にして日本的、伝統文化的な作風というイメージが強いが、実は彼は一筋縄ではいかない作家である。その1つの極に位置するのが『痴人の愛』であり、これは谷崎のモダニズムが横溢する小説である。1924年の作品であるから、時あたかも大正デモクラシーの風潮を文化的に牽引してもいただろう。しかも、今なお全く古さを感じさせない力を持っている。それは、ここに描かれるのが尖鋭的であると同時に普遍性をも併せ持ったフェティシズムとマゾヒズムの世界だからに他ならない。2012/11/11
風眠
449
しだいに夫婦の力関係が逆転して、理想の女を育てる計画は失敗か?とも思えるが、譲治のマゾ的な嗜好を満足させてくれる女王様を作り上げたと考えれば、理想の女計画は成功なのではないかと思う。譲治の独白形式という文章の中には、官能に溺れ、背徳に酔いしれる自分を見て欲しいという、ギラッとした自意識が見え隠れする。大正13年から朝日新聞で連載されたというのもびっくりだけど、旧仮名遣いでもスラスラ読めるポップな文体に驚いた。全体的にオシャレっぽい雰囲気もあってか、ナオミの奔放さが逆に魅力的。筑摩書房・日本文学全集で読了。2013/05/23
ちくわ
252
今よりずっと性に対してクローズドな時代に、『文学=高尚』なんて糞喰らえ的な世界を生々しく描き出す…誰しもが心の奥底に持つ体験したい世界なのかも。世の中真面目な人ばかりでも無いし、一見綺麗な世界ほど裏はドロドロしてるもんな。内容も相当面白かった。恋愛は刺激が乏しくなると飽きてくるので、不安こそが恋愛を燃え上がらせる最強の燃料である現実と、男性が異常なほど独占欲が強い所も通読中伝わってきたなぁ…。譲治の心境は随所で共感出来たが…女性が本作を読むと、やっぱりナオミに共感するのだろうか?後で嫁に聞いてみようっと!2025/04/26
mitei
252
私の正直な感想としては昔の作品ながらこんなにも女性に尻にしかれる作品をここまで赤裸々に描き上げるのはすごく感じた。河合がやたら優しくしてて今の軟弱と言われる男性像にも近く感じた。2010/02/06
nobby
230
その女性の名はナオミ、カフエエで働く15の時から私が目をかけて娶った女…その美貌に白い肌、小柄で凡庸な自分との不釣り合いさはモー・モー・プルッティ(more more pretty)と評される。それ故に周囲から聞こえる魔性の噂や「もうやめておけ」の声に何と嫉妬溢れることか!そりゃ一度や二度いや何度でも、怪しきいえいえ由々しき事態もあったし、キツく閉め出したこともあるけれど、結果戻ってくるのだから仕方がない…それでも瞼を閉じれば浮かぶ笑顔に魅惑の曲線美に脚、決して実際に触れられなくとも惚れてさえいれば幸せ…2020/02/14
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