内容説明
僕とクミコの家から猫が消え、世界は闇にのみ込まれてゆく。―長い年代記の始まり。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
709
この作品は、かなりの長編になる覚悟を持って執筆され始めたのだろう。第1巻を終わったところでは、依然として構想の全体が見渡せないし、当然のことながら着地点の予想も全くつかない。加納マルタと本田元伍長には、特殊な能力という共通点はあるものの、本田はここで消えて行きそうだ。第1巻だけに限って言うなら、村上春樹がもっとも語りたかったものは、間宮中尉のハルハ河での回想に極まるだろう。それは実に凄まじい話であり、強烈なリアリティを伴って、深い印象を読者である我々に残す。第2巻で、トオルはどこに向かうのだろうか。2012/08/09
zero1
464
【死んでこそ 浮かぶ瀬もあれ ノモンハン】すべては電話から始まった。30歳の岡田は法律事務所を退職し自由な生活。行方不明の猫を探しに行き、笠原メイと出会う。そこには井戸が。妻クミコとその兄、綿谷ノボル。謎の加納姉妹。そして本田の戦友、間宮が語るノモンハンの凄惨な描写。叔父が経営するバーの話は春樹の経験?「国境の南、太陽の西」にも通じる。久々の再読だが、春樹の世界に引き込まれた。いくらでも読んでいられそうだ。朝日新聞による平成のベスト30で第10位。コロンと遺品は伏線なのか?第二部へ続く。やれやれ。2019/05/03
遥かなる想い
401
村上春樹という著名な作家について、なぜか私はあまり読んでいない。巨人が嫌いで阪神が 好きという人格にも関連があるのかもしれない。本書では綿谷昇が存在感を発している。ノモンハン事件を題材にしているらしいが、戦争の凶暴な暴力を巧みに描ききっている。2010/04/28
ehirano1
372
もうね、情報量多過ぎwww。「謎の女」「いなくなった飼い猫」「ノモンハンの回想」そして「ねじまき鳥」。これらはどう繋がっていくのか楽しみで仕方ありません。2024/07/06
パトラッシュ
336
本書が舞台化されることになり、チケットが取れたので再読した。約20年ぶりなので事実上の初読だが、村上さんは本質的にファンタジー作家だなと改めて思った。三島由紀夫や大江健三郎に比べればごく平易な文章で三島や大江なら描きそうにない非現実的な世界を創り上げる。「僕」と妻の平凡ならざる夫婦関係にいきなり残酷な戦争が入り込み、つかみどころのない世界が展開される。以前やはり舞台になった「海辺のカフカ」は何とか芝居として成立していたが、物語の展開に不可欠な山本の拷問死の場面などどうするのか。第2部以降も読んで考えたい。2019/11/09




