出版社内容情報
悲しみを優しさが包み込む、月と少年の物語
空から落ちた月と少年が出会った。人工の月があふれる街で淋しかった二人は互いに心を許していく。共に過ごす幸せな時間。やがて別れの日はくるが…。「ひとりじゃないよ」という優しいメッセージが伝わる大人向け童話。
内容説明
見えないということは、存在しないということだろうか？覚えてさえいれば、それは永遠に存在するものだろうか？ときに明るく、ときに暗く、満ち欠けをくりかえす月のように、人生はときにうれしく、ときに悲しく、出会いと別れをくりかえす。月と少年―悲しみを優しさが包みこむ物語。
著者等紹介
ジミー［ジミー］［Ｊｉｍｍｙ］
台北在住の絵本作家。広告会社のアートディレクターを経て、１９９８年より絵本の創作を始める
宝迫典子［ホウサコノリコ］
高知県生まれ、埼玉県在住。中国語の新聞やデータを日本語に訳す仕事にたずさわる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
166
月が消えてしまった。孤独な夜が始まった。人々は騒ぎ続けていた。しかし本当の月は決して見つからなかった。眠りにつくと人は今日を振り返り明日を探すように、新月が終わればまた姿を変えていく。暗闇の世界に光を届けてくれた君は、今ここにいる。誰も信じてくれないけど、もしかしたらそれでいいのかもしれない。消えてしまったのは見つめ続ける純粋な気持ちなのだから。悲しみが広がれば厚い雲に隠れ闇は更に深くなる。今もぼくは君を見つめている。君はいつまでも優しさを届けてくれるから。ジミーの絵本は優しさを優しさで包み込んでくれる。2022/09/03
masa@レビューお休み中
121
もし、君がいなくなったらどうなるんだろう。君はいつも僕たちを照らしてくれている。どんなに悲しくても、どんなに寂しくても、見上げれば君が黄色い明かりを照らしてくれていた。本当は僕らは、そのことに感謝しなくてはいけなかったんだよね。でも…僕らは、その感謝を怠って、傲慢にも人工物の君を作り上げて満足しようとしたんだ。でも、そんな中でひとりだけ君のことを想い、寄り添ってくれる少年がいたね。もしかしたら、今僕たちがお月さまを見ることができるのは、彼のおかげなんだろうね。2013/05/08
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
89
『君のいる場所』から続く三部作の二作目。空から月が消え、人々の心に不安が広がる。喪失感を埋め合わせるため人工の月が大量に作られ、至る所に飾られる。消えたと思われた月は地上に落ちてきて一人の少年に助けられていた。孤独な二つの魂は響き合い、幸せな時が流れた。だが、偽物の月では癒やされなかった人々の心はますます荒廃していく。再び月が空に昇る時、少年と過ごした時は思い出になってしまうのか。それとも……。当たり前のように『そこ』にいる存在は、喪われてしまうまでその尊さに気づかないのだろうか。2001年11月初版。2015/12/18
おくちゃん🌷柳緑花紅
88
月が空から消え、人々が大騒ぎをしているころさみしかった少年と孤独だった月が出会った。人は人工の月を作って街はその月で溢れるが、やがて偽物の月は捨てられる時がくる。少年と月との出会いはそれぞれにとって大切な相手。やがてふたりに別れのときがくる。だけど少年のさみしさも月の孤独も出会う前とは違う。ひとりじゃない。月は空からいつも優しく君を見守る。今夜も空にはお月さまが。当たり前と思っていることの傲慢。無くなったら偽物を作る浅慮。そこにいてくれる事への有難さを思い出させてくれた。謙虚にならなくては。2022/08/16
masa@レビューお休み中
76
【再読】夢中になって読んではじめと違って、改めて読むと感じ方が違う。やたらと人間の傲慢さが目立って見えてしまった。なんで人間はこんなにも欲深いんだろう。なんでこんなにも自分のことしか考えていないんだろう。当たり前に見えていたものは当たり前にあるとしか考えず、なくなったものはどうにかして無理にでも作りだそうとする…。もし今世界から月がなくなったら、人間はどうするのだろうか。きっとこの物語にあることと同じことをするに違いないと、確信して思ってしまうのだ。2018/03/11
