堀江栞 声よりも近い位置

堀江 栞【著】

小学館（2022/03発売）

• サイズ B5判／ページ数 144p／高さ 26cm
• 商品コード 9784096823897
• NDC分類 723.1
• Cコード C0071

出版社内容情報

画家・堀江栞、初めての作品集

有機溶剤のアレルギーのため、岩絵具と顔料、和紙と膠で作品を生み出し続ける堀江栞。2015年の第6回東山魁夷記念日経日本画大賞展入選作品「さまよう」で注目された彼女が描く対象は、傷つけられ、痛みを背負って、悲しさや辛さを湛えた存在です。それらは動物や想像上の生き物であったり、石や人形などの無生物でありました。それがパリへの留学を経て、対象が人に拡がり、その集大成として、新作「後ろ手の未来2021」として結実、本作で「VOCA展2022 現代美術の展望ー新しい平面の作家たちー」においてVOCA佳作賞を受賞し、その作品も収載しました。
傷つけられた者たちの「小さき声」を届けるために表現し続ける堀江栞の作品は、分断が拡がる世界に生きる多くの人たちに声や居場所を与え、流れに抗う勇気と深い共感が得られます。
作品集には、「さまよう」から最新作まで90点余りを収載。芥川賞作家で、NHK『日曜美術館』で司会も務める小野正嗣さんと神奈川県立近代美術館館長の水沢勉氏という、堀江栞作品を長く見続けている2人が寄稿しています。
いま最も注目を浴びる画家・堀江栞の全貌が伝わる一冊です。

【編集担当からのおすすめ情報】
「VOCA展2022 現代美術の展望ー新しい平面の作家たちー」で佳作賞を受賞した新作「後ろ手の未来2021」は、1点が1940×600ミリメートルあり、それが5点で構成される大作です。この作品の全体図はもちろん、作家の特徴でもある、粒立つが如きマチエールが際立つように部分拡大図も豊富に収録しています。そのマチエールを、神奈川県立近代美術館館長の水沢勉氏は、「遠近の揺れのなかで、見るものは、絵肌の体験へと誘われることになる。それは、通常の日本画ではあまり例をみない厚さで細い筆で塗り重ねられたマチエールである」と記しています。
堀江栞が訴え続ける世界と、それを表現するマチエールの燦めきにも注目です。

内容説明

いまはもういない彼らと、これから来る彼らに。堀江栞、初めての画集。

目次

「声よりも近い位置」にいるために（堀江栞）
作品Ｗｏｒｋｓ
Ｅｓｓａｙ（くまそんさんがいた；コジャックの館；その他報告事項；記念写真；かさぶたは、時おり剥がれる）
堀江栞　遣わされたまなざし（水沢勉）
ともにあること（小野正嗣）

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[兵士Ｏ]

図書館の新刊コーナーでこちらを不気味に見つめる一人の青年（？）。僕の心を射抜くような静かな瞳が印象的でした。作中の栞さんのエッセイでその理由が分かりました。この人にとっては、幼年期にいじめを受けたお陰で他者の気持ちが分かるようになりました、みたいな安易な体験ではなく、もっと他者との断絶さえ意味するような今でも癒されていない心の傷を抱えているようなのです。それは大きく、ずっとモチーフとして人が描けなかったそうです。弱者に寄り添う決意の下、「人」を描き、それが結晶化されたのでしょう。この表情が物語っています。

2022/06/26