出版社内容情報
戦後を代表する女流詩人・石垣りん。彼女は眼前にある「家と社会の問題」に鋭く切り込み、現代人の孤独と真っ正面から向き合った詩を書いた。その表現は苛烈にして、海のような慈愛に包まれ、読者の心を根底から揺さぶる。すべての詩に、背景や言葉の意味がよくわかる鑑賞解説付き。
巻末エッセイは重松清の書き下ろし。
石垣 りん[イシガキ リン]
著・文・その他
井川 博年[イカワ ヒロトシ]
著・文・その他
目次
私の前にある鍋とお釜と燃える火と
屋根
貧乏
家
夫婦
月給袋
白いものが
海とりんごと
原子童話
挨拶〔ほか〕
著者等紹介
石垣りん[イシガキリン]
1920年(大正9)~2004年(平成16)。東京の赤坂に生まれる。高等小学校卒業後、14歳で日本興業銀行に就職。働きながら詩作を続け、39歳のとき、第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』を刊行、高く評価される。家と社会の問題に鋭く斬り込み、現代人の孤独と向き合うそれらの詩は、読者の心をつよく揺さぶる。2004年、84歳で死去
井川博年[イカワヒロトシ]
1940年(昭和15)、福岡県生まれ。詩人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kanata
20
井川博年選・解説のシリーズ『永遠の詩』の5巻目にあたるこの本のタイトルは、石垣りんの詩『くらし』の最後の一文から取っている。彼女は14歳で自立を目指し銀行員となり、55歳で勤めあげるまで家族を支えた。戦後、独身のまま84歳で亡くなるまで、女性の行き方を模索した一人でもあるだろう。『崖』の痛く鋭い描写や『銭湯で』の一円の大切さと湯に浮く軽さの不思議など多様かつ日常的な詩を改めてよむ。解説が、なんとも的確で、飾らない彼女の良さをそのまま包み込むような素晴らしさでまた感動。 2018/01/27
メイ&まー
16
茨木のり子さんの本棚にたくさん彼女の本が並んでいて気になっていた詩人。お二人は大親友だったのですね。石垣さんの詩には、働く者の生きる者のほんとうの言葉が詰まっている。ごく若くして一家の家計を支えなければならなかった鬱屈、心まで擦り減らしながらも食わねばならぬ辛さ。そういった生々しい「獣の涙」をうたいながら、でもその詩の印象たるやきっぱりとして清冽。名前の通りぴしりとして、「石垣りん それでよい。」。また、「やすらかに美しく油断」…していてはいけないのじゃないか、その疑いの気持ち、忘れずにいようと思う。2014/03/18
新田新一
5
石垣りんの詩は、何度読んでも良いです。心が揺さぶられます。文学で生計を立てるのではなく、銀行で働きながら家族を支えた勤め人としての矜持や哀歓が、行間から感じられます。後半に載っている人生後半の詩は、これまで読んだことがありませんでした。それらの詩では、広い視点から人間の存在を丸ごと描こうとしているように感じます。「おやすみなさい」と言う詩では、眠りの世界ではみんな平等と表現されています。この作品では、苦しいことが多い人生での救いが示され、詩全体に深い優しさを感じました。2023/07/03
サトゥルヌスを喰らう吾輩
5
二冊め永遠の詩シリーズ。こちらもスーパークールでした。この冬の収穫は、詩を読み始めたこと、それで石垣りんと茨木のり子を知ったこと。2016/12/12
空の色は青い
4
女性として生きる、作者の日常を綴った詩。解説の通り、後半に連れて、優しくなっていくのが分かる。凛としたその生き方に、表現に、感動した。/原子童話、表札、定年、川のある風景、かなしみ2018/08/09
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