出版社内容情報
生誕百年の時を超え、今蘇る珠玉の63作品
「あるべき」姿と「ありたい」姿。その狭間で人々は迷い、悩み、思い惑う。そのことが人を変え、運命を動かす。行くべき姿を探る人々の姿に、人生の実相をみる作品群。掲載作品は、『晩秋』『金五十両』『泥棒と若殿』『おたふく』『妹の縁談』『湯治』『しじみ河岸』『釣忍』『なんの花か薫る』『あんちゃん』『深川安楽亭』『落葉の隣り』の12作品。
内容説明
“あるべき”姿と“ありたい”姿。その狭間で、人はなにを見出すのか。生誕100年の時を超え、いま新たに蘇る珠玉の作品の数々。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソーダポップ
23
惑う。どうしたらよいか判断に苦しむ。「さて、なんと言ったら良いのか」道や方向が分からなくなる。迷う「知らない道角で」悪いことに心を奪われる。「誘惑に」うろたえる。あわてる。「いかなむらと驚き」人生を進んでいく過程で人は必ず迷い惑う。しかし、この12の短編集の主人公は、惑いながらも必ず自分なりの答えを見つけるべく、必死で生き抜いていく。弱くても強く生きようとするそんな姿勢が良い短編集でした。2024/03/07
zoros
5
選集。 金五十両、泥棒と若殿、おたふく、妹の縁談、湯治、なんの花か薫る、落ち葉の隣がよかった。 2022/09/03
らびぞう
5
12編の短編集。その中の「おたふく」「妹の縁談」「湯治」の3編は、おたかとおしず姉妹の3部作。おたかの一途な思いが、おたふく→妹の縁談→湯治と時が遡る話により、わかっていく。「泥棒と若殿」が、良かった。全てがハッピーエンドではない、そこには、江戸時代の身分の違いがある。2017/05/05
山内正
4
真新しく魚定と墨の字が戸に 断りなしに書いて貰ってと謝る 今日あんたの兄さんって人がね 魚屋の子って嘘ついて 大店の息子じゃないの 佐太郎の兄が お前の道楽は私の 暖簾分けの話が出た時だ 家を出たら道楽は止んだな おっ母さんは泣かない日はないよ 皆待ってるんだ 横で聞くおはんが行ってあげてと 二年もあんたに可愛がって貰ったから 佐太郎と二人下座に坐り皆さんのお陰と詫び兄貴の苦労を詫た 祝の酒と酔い潰れ悪態をつく 佐太郎が出てってくれと一言 暗がりからおはんが出てきた 済ねえおっ母さん兄貴2022/03/16
山内正
4
手紙に封をし向き直る 進藤主計だと話す 心を抑えながら聞いた 謹慎の身ゆえ世話をと 夕暮の雨警護の者と加護が玄関 に着く 一日書物を夜中まで 二十年圧政をしき納めた 津留の父も犠牲になり死んだ この人が私曲を欲しいままに 広縁に立ちあの木は知ってるか 櫟かと口の中で言う この年になる迄名は知っていながら馬鹿なことだ 吟味方が下調べに これは余りにも違いますと声が 、弱音を言うな他に誰がいる 肩を揉ましながら お前が誰の娘か知っている こらで少しは気が楽になった2022/02/25