出版社内容情報
平家一門の興亡をめぐる人間絵巻。自らの力を信ずる武士たちの躍動的な行動の背後には、世の無常のきびしい哀韻が漂う。合戦を描く簡潔な和漢混交文と、女人哀話を語る情緒的な和文体の書き分けに、語り物の性格がある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナハチガル
13
3年くらいかかって読了。終わりの方になって、やっと(多少は)すらすら読めるようになってきた。他の現代語訳もいろいろ見てみたが、やはり語りを目的として編まれた原文の心地よさには替えがたい。外国語の翻訳同様に、同一言語の翻訳であってさえ、伝えることができるのは意味だけで、どれほど優秀な翻訳者であっても、自動翻訳がどれほど発達しようとも、原文のリズムや味わいを伝えることはできないのではないかという気がする。中学生の頃に暗記した『敦盛最後』に差し掛かった時が一番感動した。もう一回読みたい。A+。2019/12/29
ブルーツ・リー
5
「没落の文学」という言葉がぴったり来るかも。当時仏教で末法思想が流行し、20世紀末に世界が終わる的な話があったけれど、あれよりも更に厭世的な風潮が強まっていた時代。 それに加えて、武士が大きな顔をし始めてしまって、殺し合いが全国規模で発生するようになった結果、それまでの、平安の優美な文学だったり、仏教説話の道徳的な話だったりがだいぶ崩れ、軍記物と、末世感が非常に強い物語となりました。 とにかく、平家が端から殺されまくる!諸行無常の響きあり、の冒頭が、全てを語っていたように思われました。2019/08/19