内容説明
終戦間もない混乱の東京。十六歳で雀ゴロとして生きる“私”は、一つ年上のボッチと出会う。一匹狼ながら人恋しい妙な感情に見舞われた“私”は、ボッチを相棒にするべく麻雀の“通し”を仕込むが、うまくいかない。やがて、ひとり地方へ流れていくが…(『雀師流転』)。未完ながらも、戦後の匂いを濃く残す“もうひとつの『麻雀放浪記』”。長編小説に加え、著者が出会ったギャンブルの“職人”たちや、勝負の思い出を綴った文庫未収録エッセイ『麻雀師渡世』から精選した二十三編も併載。
目次
雀師流転
麻雀師渡世(青春雀荘荒らし;天和職人一匹狼;指先の天才たち;サイコロ賭博師;ギャンブル無情)
著者等紹介
阿佐田哲也[アサダテツヤ]
1929年東京生まれ。雑誌記者などを経て作家活動へ。阿佐田哲也の筆名で麻雀を題材にしたギャンブル小説を多数発表する一方、本名の色川武大名義で主に純文学、井上志摩夫名義で時代小説などを執筆。89年心筋梗塞で倒れ死去。享年六十歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆーいちろー
1
未完の長編「雀師流転」とギャンブルエッセイ「麻雀師渡世」収録。時代が遠くなってしまったこともあって、阿佐田哲也が残した物語群ははたして、事実を本にしたものなのだろうか?と感じてしまうこともしばしば…もちろん、諸作品が創作というのは当たり前だが、その前提には、戦後一時裏稼業で身を立てていた作者の経験が反映されているというのが、今のところ常識であるが…「麻雀師渡世」を読むと、いくつも他の小説として発表されたエピソードが散見されて面白い。阿佐田作品の重層構造が、物語の魅力を深める一つの要因になっているとも思う。2013/03/10
いい日
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表題作「雀師流転」は阿佐田哲也の、未完ゆえに単行本化していなかった作品。これは素晴らしい。残りの「麻雀師渡世」は、何冊か短編集を読んでいる人には、ネタがカブっているので退屈かも。ただ、表題作だけで十分読む価値はあると思います。2010/08/18