内容説明
昭和三十年七月。夏休みのある朝、小学四年生の広之は大阪から夜逃げしてきた家の子・勝治と出会った。無邪気な少年同士の友情は、親たちの抱える複雑な情と事情に流されて、ひりひりとした痛みを帯びていく。ひと夏の体験とかつて荒くれ者だった父が酔って語る“魂の話”は、広之の心に何を刻むのか―戦争の傷跡残る和歌山を舞台に、ふたりの少年の出会いと友情、そして別れを軸に、大人たちの人情の機微と愛情を情感こめて綴った、ふたつの家族の物語。
著者等紹介
山本音也[ヤマモトオトヤ]
1944年和歌山県生まれ。1982年「宴会」で中央公論新人賞、2002年に『ひとは化けもんわれも化けもん』で第九回松本清張賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
25
「理想の家庭の条件とは?」と聞かれて、皆はどんな事を思い浮かべるのだろう。例えば、「血のつながりがある親と暮らすこと」「両親がまっとうな仕事についていて裕福」「家族が健康である」等々だろうか。だが本当の幸せは、外的条件のみでは計れない。肝心なのは、家族それぞれの、お互いを思う心がどれだけ深いかだろう。そして、思う心の強さと深さは、別れの辛さをどれだけ知っているかに依ると思う。だから彼等は出会った人との繋がりをとても大事にして、必死で守ろうとする。どんなに言葉がぶっきらぼうでも真心は伝わる。2008/04/16
アキ
4
舞台は戦後をまだ引きずっている昭和三十年の和歌山。夏休みに入って間もなく出会った広之と勝治。様々な思いと心を引っ掻く傷と冒険と・・・楽しいけれど切なくて、そんなもやもやとした感情やちょっとくすんで見える光景やニオイが親の愛情とともにジワジワと浸透してくる感じで、懐かしささえ覚えた。吉野の桜。大和上市の桜は、きれいなんだろうなぁ~読後感はジーンとします。50代後半から60代の人ならもっと楽しめると思います。2010/09/02
こぺたろう
1
和歌山県が舞台の作品。前半はなかなかのめりこめなかったが、後半は一気読み。大人になってからの再会も、いい。 2014/11/16
坂口まきほ
1
難しい。そしてものすごく深い。そんな印象。感じたことはたくさんあるけど、うまく言葉にできない・・・2010/04/09