内容説明
「日本人よ、やまとごころを取り戻せ」―。二〇〇〇年に総統職を退いて民間人になった後も、その発言や行動が注目されてきた台湾の哲人。本書は、その李登輝が日本の現状を憂い、「指導者」たるべきものの心構えを「ノーブレス・オブリージュ」をキーワードに説いた作品である。テキストは、新渡戸稲造の『武士道』。欧米では、宗教教育なくして道徳なしといわれるが、日本では武士道が指導者たちの道徳規範だった。日本精神の真髄を、戦前日本の教養教育を受けて育った著者が、古今東西の哲学知識を総動員して解題する。
目次
第1部 日本的教育と私(世界に目を開いてくれた先哲の教え;新渡戸稲造との出会い;新渡戸稲造、国際人への旅立ち)
第2部 『武士道』を読む(道徳体系としての武士道;武士道の淵源;義 ほか)
付 慶応大学三田祭・幻の講演原稿“日本人の精神”
著者等紹介
李登輝[リトウキ]
台湾前総統。1923年台湾生まれ。台北高校卒業後、京都帝国大学中退。台湾大学卒業。米コーネル大学大学院博士課程修了。台北市長などを歴任したのち、蒋経国総統(当時)から、84年副総統に指名される。88年蒋経国の死去にともない総統に昇格。2000年5月総統を退任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じーつー
17
友人より李登輝さんを教えて頂き、一番惹かれたタイトルの本を購入してみる。 訳者とか書いてないから本人が書かれた本だよね? 紹介を頂いた通りとても読みやすい本だった。 新渡戸稲造の武士道も読んだことがあるわけではないけど、それの解説として、日本人の古来から根付く精神を読む。 予め台湾の歴史を教わっていたから理解しやすい背景もあったし、だからこそ日本への愛情のようなものも感じられた。 近代の物事の流れや考え方、心意気を知るのにお薦めな一冊。2020/09/04
大先生
11
先日お亡くなりになった台湾元総統の李登輝さん。22歳まで日本人として日本教育を受けて育った方です。李登輝さんの本は何冊もありますが、この本が最高です。新渡戸稲造大先生の「武士道」の解説本として、これ以上のものはないかもしれません。李登輝さんが、この本で日本人に伝えたかったこと、それは「日本および日本人本来の精神的な価値観をいま一度明確に想起してほしい」「『伝統』なくして真の『進歩』などありえない」「日本人よ自信を持て、日本人よ『武士道』を忘れるな」でした。しっかり受け止めたいと思います。2020/08/18
よう
10
図書館本。李登輝さんが、日本をこれだけ愛しているとはしらなかった。名前は聞いたことある程度だったけど、いまの日本人より日本人らしいのかも。「武士道」についての解説本ではあるけれど、そこかしこに台湾と中国との関係や戦後の日本の自己否定を憂う記述が出てくる。戦前まで日本人だった彼には、歯痒く思えることもあったのだろうと感じる。あとがきに座右の銘には武士道からでてきた「誠実」「自然」の文字を書くとあり、この人となりを示すものだと思う。読んでよかった。2023/01/21
isao_key
8
戦前の日本の教育を学んだ李元総裁の精神と体には、今の日本人が失ってしまった道徳観や倫理観がいまだに流れている。この書を読むと当時の学生の教養の高さを示す読書量には驚かされると同時に「人生とは何か」「人間いかにして生きるべきか」という命題に真剣に向き合っていたかがわかる。その中で出会ったのが『武士道』であった。この本は単に『武士道』を解説しただけにとどまらず、台湾、日本の事情に照らし合わせながら、新渡戸稲造の言わんとする言葉の本質を描き出している。武士道の中心に名誉があるなど、今なお多くの示唆を与えてくる。2013/03/22
さきん
7
李氏から見る世界観や日本や台湾、中国に対する考えがよくわかる。私も農学を勉強しているので、大いに共感するところがあった。よくも国民党に抹殺されなかったなと思った。2015/07/10