出版社内容情報
女性に仮託して、日記文学というジャンルを切り開いた紀貫之の『土佐日記』、道綱母が夫の愛に飢渇する日々を吐露した『蜻蛉日記』、後深草院二条が濃密な性愛を描いた『とはずがたり』。代表的日記文学三篇を収録。
菊地 靖彦[キクチ ヤスヒコ]
著・文・その他/翻訳
木村 正中[キムラ マサノリ]
著・文・その他/翻訳
伊牟田 経久[イムタ ツネヒサ]
著・文・その他/翻訳
久保田 淳[クボタ ジュン]
著・文・その他/翻訳
内容説明
原文の魅力をそのままにあらすじと現代語訳付き原文ですらすらよめる新編集。歴史小説をよむように古典文学をよむ。人はなぜ、旅をし、人生を日記につづるのか。寂寥、苦悩、愛執、涙…。時空を越えて伝わる三つの人生をよむ。
目次
土佐日記(序;人々との別れ;出立 ほか)
蜻蛉日記(序;兼家の求婚;兼家との結婚 ほか)
とはずがたり(後深草院と父との密約;後深草院に連れられて御所へ;懐妊と父の死 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y
37
「とはずがたり」が読みたくて手に取ったけれど、他2作も学生時代に接したときとはまた違った見方で読むことができておもしろかった。「とはずがたり」は聞きしに勝る自由奔放な女の話だった。官能と言うより破廉恥。気ままな恋愛は甘美ではあるかもしれないが、一時の快楽は生んでも互いを傷つけあって疲弊するばかりで非生産的な愛だと思った。それにしても男が何人もの女と関係するというのは道徳としてどうなのかはさておき、ある程度は受け入れられているのに、女が何人もの男と関係を持つとなると、タブーな感じがするのはなんでだろうか。2015/05/10
Tadashi_N
22
教科書には載せられない古文。自由奔放な男女関係。2019/11/04
翡翠
15
『土佐日記』と『蜻蛉日記』はなんとなく読んだことがあったが、『とはずがたり』は初めて。現代の常識からすると衝撃内容だが、結婚形態の違う時代のこと。後ろ盾があるかないか、寵愛を受けることにより得られる生活の安定等を考慮すると、一概に二条を奔放な女性とはいえない気がする。2022/01/05
TAKA
14
図書館本。とはずがたりはこれを見るまで存在知らなかった。この時代、書き物は悲しみを紛らわすためにしていたのかもしれない。2025/06/30
おゆ
8
「土佐日記」都から宝のように抱いてきた子が、帰るときには共にいない。幼い愛娘に世を去られ、さらに今また思い出の土地からも去らなければならない。触れれば手を切る生々しさではなく、指の隙間から零れ落ちてゆく面影を必死に掻き集め、そこに顔をうずめるような儚さを感じる。「蜻蛉日記」は田辺聖子「文車日記」等で詳しく紹介されていたせいか、初読なのに再読気分。思うに任せない身の上を嘆いてばかりの道綱母、けれど辟易どころか共感ばかりしてしまう。兼家とも不仲というよりは腐れ縁のようで、長年連れ添うには悪くないのでは。2017/05/30